激辛ブームが続く現在、SNSでは新しい激辛チャレンジが日々話題となっています。しかし、そんな激辛料理をはるかに超える「世界一辛い唐辛子」が2023年に新たに認定されたことをご存知でしょうか?
今回は、ギネス世界記録に認定された世界で一番辛い唐辛子「ペッパーX」について、その科学的な辛さの仕組みや安全性について、信頼できる情報源をもとに詳しく解説していきます。
目次
ギネス公式認定!世界一辛い唐辛子「ペッパーX」の詳細データ
引用元: GIGAZINE
2023年10月、新記録達成の瞬間
2023年10月9日、ギネス世界記録によって正式に認定された世界で一番辛い唐辛子「ペッパーX」。その驚異的なスコヴィル値(辛さの単位)は269万3000 SHUに達します。
この数値は、これまで世界一の座にあった「キャロライナ・リーパー」の164万SHUを大幅に上回り、約1.6倍の辛さを実現しています。参考までに、軍事・警察用の催涙スプレーが約200万SHUであることを考えると、ペッパーXがいかに強烈な辛さを持つかが理解できるでしょう。
ペッパーXの外観と特徴
ペッパーXは、前世界記録保持者のキャロライナ・リーパーに似た形状をしていますが、鮮やかな赤色ではなく、茶色がかった緑色をしているのが特徴です。サイズは約2.5cm程度と比較的小さく、見た目からはその強烈な辛さを想像することは困難です。
唐辛子の辛さを測る科学「スコヴィル値」の仕組み
スコヴィル・オーガノレプティック・テストとは
スコヴィル値(SHU:Scoville Heat Units)は、1912年にアメリカの化学者ウィルバー・スコヴィルによって開発された辛さの測定単位です。当初は人間の味覚に頼る「スコヴィル・オーガノレプティック・テスト」が用いられ、唐辛子エキスを砂糖水で薄めて辛味を感じなくなるまでの希釈倍率で測定していました。
現在では、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、辛味成分であるカプサイシノイドの濃度を正確に測定し、スコヴィル値に換算する方法が主流となっています。
身近な食品との辛さ比較
辛さの程度をより理解しやすくするため、身近な食品のスコヴィル値と比較してみましょう。
- ペッパーX: 269万3000 SHU
- キャロライナ・リーパー: 164万SHU(前世界記録)
- ブート・ジョロキア: 約100万SHU
- ハバネロ: 10万〜35万SHU
- 日本の鷹の爪: 約4万SHU
- タバスコソース: 約3万SHU
- ハラペーニョ: 2500〜8000 SHU
開発者エド・カリー氏の10年間にわたる品種改良
科学的アプローチによる唐辛子開発
ペッパーXを開発したのは、サウスカロライナ州のPuckerButt Pepper Company社を経営するエド・カリー氏です。カリー氏は、キャロライナ・リーパーの開発者でもあり、唐辛子の品種改良において世界的な権威として知られています。
ペッパーXの開発には約10年の歳月が費やされ、異なる高辛度品種の交配を重ねることで実現されました。カリー氏によると、この研究は単なる話題作りではなく、カプサイシンの医療応用(鎮痛剤としての利用等)や農業科学への貢献を目的としているとのことです。
更なる記録更新への挑戦
カリー氏は、ペッパーXよりもさらに辛い品種の存在についても示唆しており、唐辛子の辛さの限界はまだ見えていない状況です。ただし、これ以上の高辛度品種については、安全性や実用性の観点から慎重な研究が必要とされています。
ペッパーXの安全性と健康への影響
医学的に報告されている症状
スコヴィル値200万を超える超高辛度唐辛子の摂取により、以下の症状が医学的に報告されています。
- 激しい口腔・咽頭の灼熱感
- 大量の発汗と涙液分泌
- 嘔吐・腹痛
- 呼吸困難
- 一時的な血圧上昇
- 胃腸粘膜の炎症
摂取時の注意事項
厚生労働省の食品安全情報によると、極度に辛い食品の摂取は以下の方には特に注意が必要です。
- 心疾患・高血圧の既往がある方
- 胃腸疾患(胃潰瘍・十二指腸潰瘍等)のある方
- 妊娠中・授乳中の方
- 小児・高齢者
万が一摂取してしまった場合は、水ではなく牛乳やヨーグルトなどの乳製品、または砂糖の摂取が推奨されています。症状が激しい場合は、無理をせず医療機関への相談をお勧めします。
日本でのペッパーX体験方法
現在の入手方法
ペッパーX本体の種子や生の実は、現在一般販売されていません。体験できるのは、開発元のPuckerButt Pepper Company社が製造するホットソース「The Last Dab XXX」を通じてのみとなっています。
このホットソースは、一部の輸入食品店やオンラインショップで購入可能ですが、価格は1本(約148ml)で9000円〜10000円程度と高価です。

安全な楽しみ方
激辛愛好家の方でも、以下の点にご注意ください。
- 少量から始める(爪楊枝の先程度)
- 体調の良い時に試す
- 乳製品を事前に準備しておく
- 単独ではなく、周囲に人がいる環境で試す
- 手袋の着用(皮膚への付着防止)
よくある質問(Q&A)
Q1: ペッパーXは一般人でも購入できるの?
A: 現在、ペッパーX本体の種子や生の実は一般販売されていません。開発者のエド・カリー氏が経営するPuckerButt Pepper Company社のホットソース「The Last Dab XXX」にのみ使用されており、このソースを通じて体験可能です。
Q2: スコヴィル値269万はどれくらい危険?実際に健康被害はある?
A: スコヴィル値200万を超える唐辛子は、摂取により激しい胃痛、嘔吐、呼吸困難を引き起こす可能性があります。心疾患や胃腸疾患のある方は特に注意が必要で、過去には救急搬送された事例も報告されています。
Q3: なぜエド・カリー氏はこれほど辛い唐辛子を作り続けるの?
A: カリー氏によると、唐辛子の品種改良は農業科学への貢献と、辛味成分カプサイシンの医療応用(鎮痛剤等)の研究が目的とのことです。単なる話題作りではなく、科学的探究心が動機となっています。
Q4: 日本で最も辛い唐辛子は何?ペッパーXと比較すると?
A: 日本在来種では「鷹の爪」が約4万SHU、沖縄の「島とうがらし」が約10万SHUです。ペッパーXの269万SHUと比較すると、島とうがらしでも約27分の1程度の辛さに過ぎません。
Q5: もしペッパーXを食べてしまったらどう対処すべき?
A: 水では辛味成分が広がるため逆効果です。牛乳やヨーグルトなどの乳製品、または砂糖を摂取してください。症状が激しい場合は無理をせず医療機関を受診することをお勧めします。
まとめ:人類の探究心が生み出した食の極限
2023年にギネス世界記録に認定された「ペッパーX」は、スコヴィル値269万3000 SHUという驚異的な辛さを実現し、これまでの常識を覆しました。
重要なポイント:
- 認定日: 2023年10月9日にギネス世界記録で正式認定
- 辛さ: 269万3000 SHU(軍事用催涙スプレーを上回る)
- 開発者: エド・カリー氏(PuckerButt Pepper Company社)
- 開発期間: 約10年間の品種改良による成果
- 入手方法: 現在は専用ホットソースのみで体験可能
辛さを追求する人類の探究心は止まることを知りません。ペッパーXは現在の頂点ですが、農業科学の発展により、さらなる記録更新も期待されます。
激辛愛好家の方も、安易な挑戦は極めて危険です。安易に摂取すると健康を損なう恐れがあるため、この究極の辛さに挑戦する場合は、専門家の指導のもと、万全の準備と体調管理を徹底してください。辛いものが苦手な方はもちろん、興味本位での接触は絶対に避けるべきです。これは単なる『食』ではなく、人間の限界に挑む、極めて危険な物質であることを認識してください。
参考情報源: