施工管理として15年、工程管理・安全管理を中心に現場を担当し、
1級建築施工管理技士として多くの現場を見てきました。
これまで20名以上の退職者・転職者を見送ってきた経験から、「辞めて後悔する人」と「辞めて正解だった人」の違いを実感。本記事では、その知見を包み隠さず共有します。
「もう限界かもしれない…」
施工管理として働くあなたも、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。
実は、建設業の離職率は他業種と比べて高く、特に入社3年以内の離職が多いとされています。国土交通省の調査によれば、建設業の労働時間は全産業平均より長く、月間の所定外労働時間も多い傾向にあります。
この記事では、施工管理歴15年・1級建築施工管理技士の私が、実際に見てきた20名以上の退職者・転職者の事例をもとに、「辞めて後悔した人」と「辞めて正解だった人」の違いを解説します。
正直に言います。私も、何度も「辞めたい」と思いました。
目次
施工管理を辞めたいと思うのは「普通」です

まず知ってほしいことがあります。
辞めたいと思うのは、あなたの能力や根性の問題ではありません。
施工管理は、構造的に負担の大きい仕事です。
- 業務量が多い(書類作成、現場管理、職人調整、発注者対応など多岐にわたる)
- 責任が重い(安全管理、品質管理、工程管理すべてを担う)
- 評価されにくい(うまくいって当たり前、トラブルがあれば責任を問われる)
- 長時間労働(国土交通省調査では月平均残業時間が他業種より長い)
「しんどい」「辞めたい」と感じるのは、正常な反応です。
辞めて後悔した人の共通点
15年間で20名以上の退職者を見てきましたが、後悔しやすい人には明確な特徴があります。
① 感情だけで辞めた人
- 上司と喧嘩した直後に辞表を出した
- 現場トラブルで一時的にメンタルヘルスに不調をきたした状態で判断した
- 繁忙期のピーク時に「もう無理」と衝動的に決断した
👉 この状態で辞めると、冷静になったときに後悔するケースが非常に多いです。
② 準備なしで辞めた人
- 転職先が決まっていない
- 自分のスキルや実績の棚卸しをしていない
- 業界の転職市場や他社の労働環境について情報収集していない
👉「こんなはずじゃなかった…」となるパターンです。
実例:Aさん(30代・施工管理経験8年)
上司との衝突をきっかけに退職。しかし転職先でも職人とのコミュニケーションで同じ問題が発生。「問題は会社ではなく、自分のコミュニケーション力だった」と後悔し、結局1年後に建設業界に戻ることになった。
③ 自分の問題を整理していない人
「仕事が嫌」と一言で片付けてしまう人は失敗しやすいです。
- 今の会社の環境(人手不足、無理な工程)が嫌なのか
- 上司や職人との人間関係が嫌なのか
- 施工管理という仕事そのもの(現場調整、書類作成など)が嫌なのか
この違いを分けずに辞めると、転職先でも同じ問題に直面します。
辞めて正解だった人の共通点
一方で、辞めてよかったという人もたくさんいます。
① 限界ラインを理解していた人
- 夜眠れない日が続いている
- 原因不明の体調不良(頭痛、胃痛、めまいなど)が続いている
- 常にイライラして、家族や友人にも当たってしまう
👉 これらは「危険信号」です。無理を続けることは美徳ではありません。
② 選択肢を準備していた人
- 転職先候補を複数リサーチしていた
- 保有資格や実績を整理して、自分の市場価値を把握していた
- 転職エージェントや業界の先輩に相談していた
👉 辞める前から動いていた人は、転職後の満足度が高い傾向にあります。
成功事例:Bさん(35歳・施工管理経験12年)
大手ゼネコンから地方の中堅工務店に転職。年収は約100万円下がったが、残業時間が月80時間から20時間に激減。「家族との時間が増えて、人生が変わった。年収より時間を選んで本当に良かった」と満足している。
③ 「一時的な回避」ではなく「計画的なキャリアチェンジ」だった人
辞めた理由が明確で、将来のビジョンを持っていました。
- 「このままだと5年後、体を壊して働けなくなる」と判断した
- 「家族との時間を優先したい」という明確な価値観があった
- 「この会社では実現できないキャリアパスがある」と具体的な目標があった
辞める前に必ず考えてほしい3つの質問

退職を考えたら、まずこの3つの質問に答えてください。思考を整理することで、後悔しない判断ができます。
Q1:3年後、どうなっていたいですか?
まず最初に、ゴールを明確にしましょう。
- 今の会社で主任・所長になりたいのか
- 別の会社で施工管理を続けたいのか
- 異業種に転職したいのか
- 独立・起業を考えているのか
今の延長線上にある未来でOKなのか、それとも無理なのか。ここが一番大事です。
Q2:今の不満は「会社」の問題ですか?「施工管理」の問題ですか?
この違いを見極めることが、転職の成否を分けます。
「会社の問題」の例
- 慢性的な人手不足
- 無理な工程を押し付けられる
- パワハラ・セクハラがある
- 残業代が支払われない
「施工管理そのものの問題」の例
- 現場調整や職人とのやり取りが苦痛
- 書類作成業務に興味が持てない
- 労働環境が改善されても、施工管理を続けたくない
👉 ここを間違えると、転職先でも同じ悩みを抱えることになります。
Q3:社内で改善できる余地はありますか?
辞める前に、以下のアクションを試しましたか?
- 上司に業務量の相談をする(メールや1on1で記録に残す形で)
- 配置転換の希望を出す(別現場・内勤希望など)
- 産業医面談や人事相談窓口を利用する
👉これらを実施しても改善されない場合、会社都合による退職と判断しやすくなり、転職活動でも説明がしやすくなります。
「辞めない」という選択も、立派な戦略です
誤解してほしくありません。
辞める=正解、ではありません。
続けて成功している人もたくさんいます。特徴は以下の通りです。
- 業務を効率化できる(ITツールを活用する、外注できる部分を見極める)
- 仕事を任せられる(職人や協力業者との信頼関係を構築できる)
- 抱え込まない(上司や同僚に適切に相談・報告できる)
👉スキルと経験を積むことで、仕事が楽になるタイプの人もいます。
※ただし、これは業務量そのものが適正であることが前提です。
それでも辞めたいなら、やるべき行動リスト
覚悟が決まった人向けです。以下のステップで計画的に進めましょう。
ステップ① 情報収集
- 転職サイト(建設業界特化型がおすすめ)に登録する
- 企業の口コミサイトで、候補企業の実態を確認する
- 業界の先輩やOBに話を聞く
ステップ② 実績整理
- 担当した現場リスト(建物用途、規模、工期、予算)
- 成果(工期短縮、コスト削減、安全無災害など)
- 保有資格(1級・2級施工管理技士、建築士など)
👉 これが転職活動での武器になります。
ステップ③ 相談する
- 信頼できる先輩や同僚に相談する
- 家族に現状を話し、理解を得る
- 転職エージェントに相談する(業界動向や年収相場を知る)
👉 一人で決めず、複数の視点を持つことが重要です。
施工管理経験者の転職先候補
施工管理の経験は、以下のような職種で活かせます。
| 転職先 | 特徴 |
|---|---|
| 同業他社 | 中堅・地方ゼネコンは労働環境が改善されている企業も多い |
| 建設コンサルタント | 技術的なアドバイザーとして現場経験が活きる |
| 不動産デベロッパー | 建築知識を活かして企画・開発に携われる |
| 設備管理会社 | ビルメンテナンスの管理職として活躍できる |
| 公務員(建築職) | 自治体の建築指導課などで働き方が安定 |
| 建材メーカー | 営業・技術サポートとして現場知識が強みになる |
| ハウスメーカー | 住宅分野の施工管理として比較的規模が小さく負担軽減 |
よくある質問(Q&A)
施工管理を辞めたいと考えている方から、よく寄せられる質問にお答えします。
Q1:施工管理から異業種に転職した場合、年収はどうなりますか?
A: 一般的に、未経験の異業種転職では年収が20〜30%下がるケースが多いです。
ただし、1級建築施工管理技士の資格と実務経験があれば、建設コンサルタント、不動産デベロッパー、設備管理会社などへの転職で年収を維持または上げることも可能です。特に30代までなら選択肢は広いです。
Q2:「会社が嫌」と「施工管理が嫌」の具体的な見分け方を教えてください
A: 以下のチェックリストで判断できます。
会社の問題の可能性が高いケース
- 同じ業務内容でも、別の会社なら改善される要素(人手不足、無理な工程、パワハラ等)
- 業界内の他社の話を聞いて「うちだけひどい」と感じる
施工管理自体の問題の可能性が高いケース
- 現場調整、職人とのやり取り、書類作業など業務そのものに興味が持てない
- 労働環境が改善されても続けたくない
迷ったら、「理想の環境(人手十分・定時退社可能)でも施工管理をやりたいか?」と自問してみてください。
Q3:転職活動は在職中と退職後、どちらが有利ですか?
A:在職中の転職活動を強く推奨します。
理由
- 収入が途切れない(精神的余裕が生まれる)
- 採用側からの評価が高い(計画性がある人材と見なされる)
- 妥協せず条件交渉できる
ただし、心身の健康を害している場合は、退職を優先すべきです。その場合も最低3ヶ月分の生活費を確保してから退職しましょう。
Q4:1級建築施工管理技士の資格は、異業種転職でも評価されますか?
A: 建設・不動産関連であれば高く評価されます。
具体的には
- 不動産デベロッパー:建築知識が活かせる
- 建設コンサルタント:技術的なアドバイザーとして
- 設備管理会社:ビルメンテナンスの管理職
- 公務員(建築職):自治体の建築指導課など
完全な異業種(IT、金融等)では直接的な評価は低いですが、「責任ある立場での経験」「国家資格保有」はプラス要素になります。
Q5:30代・40代からの転職は可能ですか?
A: 可能です。むしろ、施工管理の経験は評価されます。
建設業界は慢性的な人手不足であり、実務経験のある施工管理技士は貴重な人材です。特に1級資格保有者は、年齢を問わず求人があります。ただし、異業種への転職は30代前半までの方が選択肢は広いです。
15年続けた私が「辞めなかった理由」
正直に言います。
楽だから続けているわけではありません。
私が15年間施工管理を続けてきた理由は、3つです。
① 現場が嫌いじゃなかった
大変だけど、建物が完成したときの達成感や、職人たちとモノづくりをする楽しさがありました。この感覚がなくなったら、私も辞めると思います。
② 成長実感があった
5年目より10年目、10年目より15年目の方が、確実に仕事が楽になっています。スキルと経験で効率化できる部分が増えたからです。
③ 自分の居場所を作れた
職人や協力業者との信頼関係、上司や同僚との協力体制。これがあるから、孤独感を感じずに続けられています。
👉これらが一つでも欠けたら、私も辞めることを考えます。
心身に不調を感じたら、必ず相談してください
以下のような症状が2週間以上続く場合、専門家への相談を強くお勧めします。
- 夜眠れない、または朝起きられない
- 食欲がない、または過食してしまう
- 常にイライラする、または何もやる気が起きない
- 原因不明の頭痛、胃痛、めまいが続く
相談先
- 会社の産業医
- 心療内科・精神科
- 厚生労働省「こころの耳」(働く人のメンタルヘルス無料相談窓口)
まとめ|辞めるかどうかより「納得して選ぶ」ことが大事
最後にまとめます。
重要なポイント
- 辞めたいと思うのは普通(あなたの能力や根性の問題ではない)
- 感情だけで判断するのは危険
- 準備と情報収集は必須
- 「会社」と「仕事」の問題を分ける
- 続けるのも正解、辞めるのも正解
大事なのは、他人の正解ではなく、あなた自身が納得できる選択をすることです。
最後に|あなたへのメッセージ
施工管理は、楽な仕事ではありません。
でも、価値のある仕事です。
続けるなら、誇っていい。
辞めるなら、胸を張っていい。
どちらを選んでも、あなたは間違っていません。
大切なのは、「誰かの正解」ではなく「あなた自身が納得できる選択」をすることです。
もし今、答えが出せなくても焦る必要はありません。この記事を保存して、心が落ち着いたときに読み返してみてください。
あなたの決断を、心から応援しています。
参考リンク

