「工程管理ができる人」と「いつも工程に追われる人」
同じ施工管理なのに、現場の回り方は大きく違います。
はじめまして、たかしんです。
施工管理として15年以上、
工程管理・安全管理を中心に現場を見てきました。
この15年で気づいたことがあります。
工程管理ができるかどうかは、能力より”考え方”の差です。
実際、私が新人時代に工程を2週間遅らせてしまった現場も、考え方を変えることで次の現場では予定より3日早く完工できました。この記事では、その経験をもとに若手施工管理が身につけるべき「工程管理ができる人の思考法」を具体的に解説します。
目次
工程管理ができない施工管理がハマりやすい3つの思考
まずは逆から見ていきます。工程管理がうまくいかない人は、次のような考え方をしています。
❌ 思考パターン1:「工程表どおり進めばOK」
工程表は計画であり、現場は生き物です。天候、資材の遅延、職人の都合など、計画通りにいかない要素は常に存在します。
❌ 思考パターン2:「遅れたら後で詰めればいい」
厚生労働省の労働災害統計によれば、建設業の労働災害の約30%が工程の無理な詰め込みに起因しています。後で詰める発想は、事故リスクを高めるだけです。
❌ 思考パターン3:「現場は気合と根性」
気合と根性も時には必要ですが、それだけでは再現性がありません。誰でも実践できる仕組み化こそが、安定した工程管理には不可欠です。
これらの考え方では、必ずどこかで工程が崩れるリスクが高まります。
詳しい原因分析は「工程表が守れない本当の理由|若手施工管理が最初に直すべきこと」でも解説しています。
工程管理ができる施工管理に共通する5つの思考法
ここからが本題です。工程管理ができる施工管理は、次の考え方を自然に実践しています。
思考法① 工程は「管理するもの」ではなく「整えるもの」
工程管理というと、「管理」「監視」「チェック」を思い浮かべがちです。
しかし、本質は”整える”ことです。
具体的には
- 無理がないか(1日の作業量が適切か)
- 重なっていないか(職種間の干渉はないか)
- 現場が動きやすいか(動線、資材置き場は確保されているか)
これらを日々整え続けるのが工程管理の本質です。
以前担当した現場で、躯体工事と設備配管工事を同時進行させようとしました。工程表上は問題なかったのですが、実際には作業エリアが重なり、双方の作業効率が30%以上低下。結果、両方とも2日遅れになりました。
次の現場では、事前に作業エリアを色分けし、「この日はこのエリア」と明確に区切ることで、同じ工期でも余裕を持って完工できました。
思考法② 工程表より「現場のズレ」を信じる
工程管理ができる人ほど、工程表や数字よりも現場の違和感を重視します。
チェックすべき3つのサイン
- 人が余っていないか
→ 職人が手持ち無沙汰=段取りの失敗 - 動きが止まっていないか
→ 作業の流れが滞る=工程遅れの予兆 - 会話が減っていないか
→ コミュニケーション不足=情報共有の断絶
これらは工程遅れが起きる2〜3日前に必ず現れる前兆です。
詳しくは「工程遅れが起きそうな現場で必ず出る5つの危険サイン|若手施工管理向け」を必ずセットで読んでください。
思考法③ 工程遅れは「点」ではなく「流れ」で見る
工程管理が苦手な人は、「今日の遅れ」「今日の作業」だけを見がちです。
一方、工程管理ができる人は
- 昨日のズレ → どこで予定と違ったか
- 今日への影響 → 昨日の遅れが今日にどう響くか
- 明日以降の負担 → このままだと3日後に破綻しないか
という時系列の流れで工程を捉えています。
【具体例】連鎖する工程遅れ
ある商業施設の内装工事で
- 1日目:壁のボード張りが半日遅れ(理由:資材到着遅延)
- 2日目:パテ処理が前日分も含めて実施され、職人の残業2時間発生
- 3日目:疲労により作業ミス、やり直しで さらに半日遅れ
- 4日目:塗装工程が1日遅れでスタート、全体工程が3日遅延
このように、1日の遅れが連鎖的に拡大します。この視点がないと、工程は必ず崩れます。
思考法④ 無理な工程は「詰める前」に止める
工程管理ができる施工管理は、無理な工程をこう捉えます。
- 「頑張ればいける」→ ❌
- 「どこが壊れるか」→ ⭕
無理な工程の3つの判断基準
- 作業員の残業が連日2時間以上発生する見込み
- 複数の職種が同じエリアで同時作業せざるを得ない
- 安全通路や資材置き場の確保が困難
この3つのうち2つ以上当てはまれば、それは無理な工程です。
国土交通省の「建設業働き方改革加速化プログラム」でも、適正な工期設定の重要性が強調されています。無理な工程は、結果的に労働災害や品質低下を招き、より大きな工程遅延につながります。
無理な工程が招く具体的な結果は「無理な工程を組むと何が起きるのか|施工管理が絶対に軽く見てはいけない現実」で詳しく書いています。
止める判断ができるかどうかが、工程管理の分かれ目です。
思考法⑤ 工程と安全を必ずセットで考える
工程管理と安全管理は表裏一体です。
工程管理ができる人は
- 工程会議で安全も必ず話す
- 無理な工程=危険と考える
という思考が習慣化されています。
なぜなら
工程が崩れる
↓
作業が重なる・急がされる
↓
安全確認が疎かになる
↓
事故が起きる
↓
現場停止、さらに工程遅延
このサイクルを理解している人は、工程を守ることが結果的に安全を守ることだと知っています。
この関係性は「安全管理チェックリスト」「KY活動が形骸化する原因とは?」とも完全につながります。
若手施工管理がまず身につけるべき工程管理の型
「考え方は分かったけど、何からやればいい?」という若手向けに、明日から使える実践的な型をまとめます。
📋 朝一でやること(所要時間:5〜10分)
ステップ1:今日の作業内容を確認
- どの職種が入るか
- 作業場所はどこか
- 必要な資材は揃っているか
ステップ2:人数・作業量・安全を照合
- 人数は適切か(余りすぎ/足りなすぎはないか)
- 作業量は1日で終わる範囲か
- 安全通路は確保されているか
時短のコツ: 前日の夕方に翌日分の80%を記入しておき、朝は「変更点」「追加作業」「天候影響」の3点のみ確認すれば5分で完了します。
⚠️ 違和感を感じたとき
工程に違和感を感じたら
- 無理に詰めない
「頑張ればいける」は危険信号 - 一度立ち止まる
5分の立ち止まりが、3日の遅延を防ぐ - 影響範囲を整理
「今日だけ」「明日まで」「来週まで」と範囲を可視化
判断に迷ったら「工程遅れが起きる現場の共通点」を思い出してください。
🔄 工程表の見直し頻度
- 日次:当日と翌日の確認
- 週次:1週間の振り返りと翌週の調整
- 月次:全体工程の見直しと修正
この頻度を守ることで、大きな工程崩れを未然に防げます。
よくある質問Q&A
Q1. 工程表と実際の現場にズレが出たとき、誰にどのタイミングで報告すべきですか?
A. ズレに気づいた時点で、まず現場代理人や工事主任に報告することが基本です。特に、翌日以降の工程に影響が出そうな場合は当日中の報告が必須です。
報告時には以下の3点をセットで伝えると、適切な判断をもらいやすくなります:
- 何がどれだけ遅れているか
- 原因は何か
- 挽回案はあるか(または支援が必要か)
早めの報告は「できない人」ではなく「リスク管理ができる人」の証です。
Q2. 「無理な工程」かどうかの判断基準がわかりません。具体的にどう見極めればいいですか?
A. 以下の3つのサインのうち2つ以上が当てはまれば、無理な工程と判断してください:
- 作業員の残業が連日2時間以上発生する
- 複数の職種が同じエリアで作業せざるを得ない
- 安全通路や資材置き場の確保が困難
これらは事故や品質トラブルの予兆です。迷ったら「この工程で事故が起きないか?」と自問してください。答えが「起きるかもしれない」なら、それは無理な工程です。
Q3. 工程管理と安全管理、どちらを優先すべきですか?
A. 必ず安全管理が最優先です。
工程が遅れても挽回策はありますが、事故が起きれば:
- 現場は完全停止
- 工程どころではなくなる
- 法的責任が発生
- 会社の信用失墜
労働安全衛生法でも、事業者には労働者の安全配慮義務が課されています。「工程のために安全を犠牲にする」という発想そのものが、結果的に工程を大きく崩す原因になります。
Q4. 若手で経験が浅いのですが、ベテラン職人さんに工程の無理を指摘しづらいです。どう伝えればいいですか?
A. 「指摘」ではなく「確認」の形で伝えるのがコツです。
良い例: 「この工程で進めると、明日の○○作業と重なりそうなのですが、何か調整案はありますか?」
さらに良い例(安全面を理由にする): 「安全通路が確保できないかもしれないので、作業順序を変更できないでしょうか?」
ベテラン職人は経験があるからこそ、安全面の指摘には理解を示してくれます。相談ベースで聞くことで、対立ではなく協力関係を築けます。
Q5. 朝一のチェックに時間がかかりすぎてしまいます。効率的にやる方法はありますか?
A. 以下の方法で、チェック時間を15分→5分に短縮できます。
方法1:テンプレート化
チェックリストをExcelやスプレッドシートでテンプレート化し、前日の夕方に翌日分の8割を記入
方法2:チェック項目を絞る
朝は「前日からの変更点」「追加された作業」「天候による影響」の3点のみ確認
方法3:ルーティン化
毎日同じ順番でチェックすることで、体が覚えて自然と早くなります
最初は時間がかかっても、2週間続けると自然と5〜10分でできるようになります。
工程管理ができる施工管理は「全部を完璧にしない」
最後に、一番大事なことをお伝えします。
工程管理ができる施工管理は
- 全部を完璧にしようとしない
- 危ないところを先に潰す
- 無理な部分を放置しない
つまり、優先順位が明確なのです。
100点を目指して80点になるより、重要な部分で確実に90点を取る方が、結果的に現場は安定します。
まとめ|工程管理は技術ではなく思考法
最後にまとめです。
✅ 工程管理は工程表だけではできない
→ 現場の空気、人の動き、違和感を感じ取る
✅ 現場のズレを見る
→ 数字より、現場の「違和感」を信じる
✅ 無理な工程を止める
→「頑張ればいける」は事故のサイン
✅ 工程と安全をセットで考える
→ 安全が崩れれば工程も崩れる
✅ 毎日の型を持つ
→ 朝5分のチェックが、1日の安定を作る
【たかしんルール】
工程管理ができる施工管理は、工程を追いかけない。
現場の”無理”を先に潰す。
参考資料・引用元
この記事は、以下の公的機関のガイドラインおよび統計データを参考にしています。
- 国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」
「建設産業政策2017+10」について - 厚生労働省「労働災害統計」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/46-23b.html - 国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000087.html - 厚生労働省「建設業における安全衛生対策」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/index.html

