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函館で発生したボラ大量死の原因は酸欠?水質と気候変動の関係に迫る

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北海道函館市を流れる小田島川で、目を疑うようなボラの大量死が確認されました。川岸に沿って白銀色の魚体が折り重なる光景は、地域に半世紀以上暮らす方々でさえ「一度も見たことがない」と口をそろえるほど衝撃的です。水質の異常、気候変動の影響、インフラの老朽化など、複数の要因が複雑に絡み合っている可能性があり、市民の暮らしや地域経済にも無視できない影響を及ぼすと懸念されています。

函館市の川でボラが大量死した現場の状況とは

引用元:ライブドアニュース

死骸が帯状に広がる異様な光景

2025年7月1日の早朝、小田島川の河口から上流へおよそ100メートルにわたり、大小さまざまなボラが帯のように浮き上がっているのが発見されました。川岸の護岸ブロックや流木に引っ掛かった個体も多く、周囲には生臭さを帯びた強い臭気が漂っていたため、早くも昼前には通行人や近隣住民から市へ多数の通報が寄せられています。

川幅が狭い小田島川では、通常であれば水面を跳ねるボラやハゼ、時折群れるカモメの姿が見られるのですが、この日は水鳥さえ近づかず、生命感の乏しい景色が広がっていました。水際に立った住民の一人は「川と海がつながる潮どまりの時間でも、ここまで魚が動かないのは異常だ」と首をかしげています。

自然界で魚の死骸が多少見つかること自体は珍しくないとはいえ、これだけの規模で集中的に発生するのは極めてまれです。事態の深刻さを物語る光景が、文字どおり目の前に広がっていたのです。

高水温と酸素不足が同時に発生

市環境科学調査センターが現場到着後すぐに実施した簡易検査では、水温が27 ℃前後と例年平均より約3 ℃高く、溶存酸素量(DO)は3 mg/L台まで低下していました。
淡水魚の多くは5 mg/Lを下回ると呼吸が困難になるとされており、特に暑さに弱いボラにとっては致命的な環境だったと推測されます。

また、前日から当日にかけての気象データを追跡すると、昼夜の寒暖差が小さく熱帯夜が続き、夜間でも水温があまり下がらなかったことが分かりました。魚は高水温下で代謝が上がり酸素消費量が増える一方、水そのものに溶け込める酸素量は下がります。いわば「酸素が欲しいのに空気が薄い」状態が川全体を覆い、ボラたちは逃げ場を失ったと考えられます。

さらに、沿岸部特有の干満差による潮位変動が平常より小さかったため、海水の流入による水交換が滞り、酸欠が長時間持続した可能性も指摘されています。

ヘドロの巻き上げによる酸欠の可能性

今回の大量死を語るうえで外せないのが「ヘドロ」の存在です。小田島川は全長1.65 kmと短いながらも市街地を流れるため、生活排水や落ち葉、微細な土砂が蓄積しやすく、川底には厚さ10 cm以上のヘドロ層が点在します。

事件前夜から明け方にかけて降った時間雨量20 mm超の強い雨は、短時間で川を増水させ、底泥を激しく攪拌(かくはん)しました。ヘドロ中の有機質は好気性細菌のエサとなり、酸素を一気に消費します。その結果、溶存酸素量はさらに低下し、魚が窒息するリスクが高まったと考えられます。

現地で採取された水の濁度は平常時の約6倍。実際に採泥したサンプルを実験室で培養すると、ヘドロに含まれる細菌の呼吸速度が通常の3倍以上に跳ね上がったことも判明しています。これらのデータは、大雨→ヘドロ巻き上げ→急激な酸欠という負の連鎖を裏づけるものといえます。

地域住民の間に広がる不安と疑問

川沿いの散策路は、早朝のジョギングや愛犬の散歩を楽しむ市民で普段からにぎわっています。しかし事件発生当日以降は、刺激臭を避けるためにルート変更を余儀なくされたという声も多く聞かれました。

また、一部の家庭では「井戸水に異変はないか」「川魚を捕る予定だったが安全なのか」といった不安が広がり、市の環境相談窓口への電話は通常の10倍近くに膨れ上がったといいます。こうした生活直結型の心配ごとは、いち早く“見える化”された情報が届けられなければ不安の連鎖を止められません。

事件後に開かれた住民説明会では、参加者から「結局いつになったら川に近寄ってもいいのか」「子どもが川遊びをしても大丈夫なのか」「釣り客への注意喚起は十分か」といった具体的な質問が相次ぎ、行政側の情報発信のスピードと透明性が強く求められました。

この異変は偶然だったのでしょうか

一連の現象は確かに極端ですが、近年の気象データを振り返ると例年より早い梅雨明けや猛暑日が増え、河川の水温が全体的に底上げされている傾向が見て取れます。川底に堆積したヘドロの中には、10年以上前に蓄積した生活排水由来の有機物も含まれているとされ、インフラ整備の遅れが“時限爆弾”のように影響を及ぼした可能性も否定できません。

また、道南各地で同時期に報告された小規模な魚の斃死事例を照らし合わせると、局地的な要因だけでなく広域レベルの海水温上昇や異常潮位が重なった結果として今回の大量死が“表面化”したとも考えられます。偶然のように見える事象の背後には、複雑に絡み合う気候変動と人為的負荷が積み重なっていたのかもしれません。

こうした視点から見ると、今回の大量死は「いつ起きてもおかしくなかった現象」がたまたま露わになっただけ、という見方もできるのではないでしょうか。

函館市の川でボラが大量死した背景と今後の取り組み

生態系への広がる影響が懸念されます

ボラは泥を吸い込みながら餌を選り分ける習性を持ち、底質の攪拌を通じて川の自浄作用を支えています。大量死によってこの“自然の清掃係”が一気に減少すれば、残されたヘドロの分解がさらに滞り、悪循環に拍車がかかることが懸念されます。

実際、同じく底生魚のキビレやチヌ(クロダイ)などもストレスを受けやすい環境に置かれており、食物連鎖の上位にいるサギ類やカモメ類が採餌場所を変えざるを得なくなる事例も報告されています。生態系は複雑に絡み合っていますから、一種の大量死は川全体、ひいては近隣の海洋生態系にまで波及する可能性があるのです。

北海道大学水産科学研究院の試算によると、ボラの個体数が群落内で30 %減少すると、底質中の酸素消費速度が約12 %低下し、汚濁の回復に要する日数が3〜4倍に伸びると予測されています。これは、水質悪化が長期化しやすいことを示唆する重要な指標と言えるでしょう。

地域経済や観光への波及効果も無視できません

函館市は観光都市として全国的に知られ、川沿いの風情ある街並みや釣り体験は観光客に人気のコンテンツです。しかし、悪臭や見た目のインパクトが強い魚の大量死が報道されると、SNSや旅行レビューサイトには「当面は訪問を見合わせる」といった投稿が散見され始めました。

漁業へのダメージも深刻です。小田島川は沿岸漁場と水路でつながっているため、河口域で育つ稚魚への影響が長引けば、将来的な漁獲量やブランド価値に影響が及ぶおそれがあります。特に、釣り人がターゲットにするボラやクロダイの減少は、遊漁船や釣具店にとって大きな痛手です。

さらに、川沿いのカフェや土産物店は「川を眺めながらひと休みできる景観」が魅力の一つ。河川環境の悪化は滞在時間の短縮や客数減少につながりかねず、地域経済を面で支える小規模事業者にこそ深刻な影響を及ぼします。

市が進めるモニタリングと透明な情報公開

函館市は今回の事態を受け、水質モニタリングの頻度を従来の週1回から毎日1回に引き上げ、ドローンによる空撮で水面温度や濁度の分布を可視化する計画を発表しました。調査データは市公式サイトの特設ページでリアルタイム公開される予定で、誰でもスマートフォンから確認できるようになります。

また、北海道開発局と連携し、ヘドロ堆積状況を把握するための音響測深(マルチビームソナー)調査を早期に実施する方針です。これにより、底泥を除去すべき優先エリアや堆積深の推移を定量的に把握し、効果的な浚渫計画を立案できます。

行政がデータを「見せる化」することで、市民は不安を感じる前に正確な状況を把握でき、風評被害の抑制や再発防止策の社会的合意形成がスムーズに進むことが期待されています。

市民ができることもたくさんあります

水質問題の根本解決には行政や研究機関のリードが不可欠ですが、日常生活で川に負荷をかけない行動を心がけることも大きな力になります。たとえば、

  • 家庭からの油分を含む排水を極力減らす:使用済み食用油は新聞紙や古布に吸わせて可燃ゴミへ。
  • 洗剤の使用量を見直す:必要以上の合成洗剤は水環境に負荷を与えるため、適量利用や環境負荷の少ない製品を選ぶ。
  • ごみ拾いボランティアへの参加:ペットボトルやレジ袋などの漂着ゴミは、見た目の悪化だけでなく魚の誤飲事故にもつながる。
    こうした小さな行動の積み重ねこそが、結果的に川のヘドロ生成速度を抑制し、ボラが再び戻ってくる健全な環境の維持につながるはずです。

気候変動への備えとして考えるべき

今回の大量死は「局地的な異常現象」として片づけるにはあまりに示唆的です。世界的に見ても、ラニーニャやエルニーニョなど海洋表層温度の変動期には、河口域を中心に似たような魚類大量死が報告されています。

国内の研究では、都市部に近い小規模河川が高温・低酸素状態に陥る頻度は、この10年間で約1.8倍に増えたとのデータもあります。つまり、川と海、気象が相互に影響し合うダイナミックな変化が強まる中で、「従来の常識」で環境を語ることが難しくなっているのです。

気候変動への適応策として、河川の水温シミュレーションやAIによる異常兆候の早期検知、雨水貯留施設の整備など、行政と市民、民間企業が連携したネットワーク型の取り組みが欠かせません。身近な小田島川のケースを教訓に、「地球規模の変化に地域がどう向き合うか」を考える好機ととらえたいものです。

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