2025年の大阪・関西万博で大きな注目を集めている「空飛ぶクルマ」。未来の移動手段として期待されるこの新技術に、思わぬトラブルが発生しました。デモ飛行中に部品が落下し、安全性への不安が一気に広がったのです。そして原因は「部品が設計通りに作られていなかった」という、基本中の基本が守られていなかったというもの。再開を目前に控えた今、本当に飛ばして大丈夫なのか？ 私たちはこの技術にどこまで信頼を置いていいのでしょうか。
空飛ぶクルマの部品が設計通りに作られていなかった衝撃
引用元：日本経済新聞
万博の目玉が技術不備で立ち止まった
2025年の大阪・関西万博は、最先端テクノロジーが一堂に会する国際イベント。その中でも注目されていたのが“空飛ぶクルマ”です。しかし、4月に起きた事故によって、未来のモビリティとしてのイメージに大きな疑問符がつくこととなりました。
デモ飛行中に機体破損、部品が落下
事故が発生したのは4月26日。米リフト・エアクラフト社製の「ヘクサ」が万博会場でデモ飛行中、18個あるプロペラモーターのうち1つが破損し、さらにモーターを覆うプラスチック製のカバー2個が空中から落下しました。幸いにも、見学者が入れないエリアでの飛行であり、操縦者も無傷でした。
設計と異なる部品が使われていた事実
原因調査の結果、問題のモーターに使われていた部品が「設計通りに作られていなかった」ことが判明。これは単なる劣化や偶発的な破損ではなく、製造段階での品質不備が直接的な要因だったのです。設計図に沿っていない部品が組み込まれていた事実は、開発体制そのものの信頼を揺るがす重大な問題と言えるでしょう。
問題の本質は「ズレ」が命に直結するという現実
空を飛ぶという行為は、地上と違って“止まれない”というリスクがつきまといます。だからこそ、設計通りであること、ミリ単位の精度が守られていることが前提です。わずかな誤差が命に関わる可能性がある以上、「設計と違う部品」が存在したというだけで、大きな不安材料になります。
約3か月ぶりの運航再開へ、本当に大丈夫？
そんな中、事故から約3か月を経て、7月12日にも運航が再開される見通しとなりました。新たな部品への交換や、全体的な安全対策が講じられたことで再開に踏み切ったとされています。再開初日からの飛行は、万博会場西端の離着陸場の上空で6日間にわたって行われる予定です。
安全が確保されたという報告はあるものの、「本当に大丈夫なのか？」と感じるのは当然です。事故が起きた当初、同様の不具合はこれまで確認されていないと説明されていました。それでも発生したということは、今後の運航においても慎重さが求められるのは間違いありません。
部品が設計通りに作られていなかったことで問われる空飛ぶクルマの信頼性
技術そのものよりも、製造現場の精度が疑問視される
今回の事故では、「技術力」ではなく「製造・品質管理体制」に注目が集まりました。設計通りのものを正確に作る――それは最先端技術であろうと、ものづくりの基本です。その基本が崩れていたとなれば、今後の開発プロセス全体を見直す必要があります。
他社の運航予定は維持、それでも不安が残る
ANAと米ジョビー・アビエーション、またスカイドライブなど、他社の空飛ぶクルマも今後万博期間中にデモ飛行を予定しています。スケジュールは予定通りとされているものの、今回のような事故を受けた今、「他社は問題ないのか」という声が出てくるのは当然でしょう。
設計思想や機体構造が違うとはいえ、製造と検査の厳密性が求められるのはどの機体も同じ。他社の安全対策にも注目が集まりそうです。
国交省も「表面だけでなく本質の対策を」とコメント
国土交通省は、この事故を航空法上の「航空事故」とは認定しませんでしたが、原因の究明と再発防止策の構築を厳しく求めました。単なる部品交換ではなく、設計から製造、検査、運用に至るまで、どこで何が見落とされたのかを明らかにする必要があります。
この姿勢は、技術の未来に対する信頼を支える大事な基盤です。
丸紅の対応は慎重だが妥当
運航を担う丸紅は、今回の件を重く見て、今秋に予定していた英バーティカル・エアロスペース製の5人乗り機体によるデモ飛行を見送る方向で調整中です。開発スケジュールの遅れもありますが、「再発を恐れての自粛」という側面もあると見られています。
未来の移動ビジネスを担う企業として、慎重すぎる判断はむしろ評価されるべきでしょう。
空飛ぶクルマの未来に必要なのは、「憧れ」より「信頼」
空飛ぶクルマは、都市の空を活用し、よりスムーズで効率的な移動を実現する夢のような技術です。しかし、夢の裏にある現実――安全性、品質管理、信頼性――を軽視すれば、たとえ空を飛べても社会に受け入れられることはありません。
「部品が設計通りに作られていなかった」――たったこの一言が、空飛ぶ未来に警鐘を鳴らしたのです。今後、再開されたデモ飛行がどれほどの信頼を取り戻せるかが、空飛ぶクルマの未来を左右する試金石となるでしょう。
この記事の疑問Q&A
Q1. 設計通りに作られていなかった部品とは具体的にどの部分ですか？
A. 問題となったのはプロペラモーターを覆うプラスチック製のカバーと、そのモーター自体です。設計図と実際の製造仕様にズレがあったとされ、詳細な材質や加工精度についての不備が指摘されました。
Q2. なぜこの設計ミスは出荷前に発見されなかったのですか？
A. 製造元での検査体制や工程管理に見落としがあった可能性があります。また、部品はアメリカで製造され、日本で組み立てられていたため、輸送中の損傷や組立ミスも含めて慎重に検証されたようです。
Q3. 今後、同じようなトラブルが起きる心配はないのでしょうか？
A. 運航再開に向けて、部品の交換や追加の安全確認が行われたとされていますが、100％のリスク排除は難しいのが現実です。今回の件をきっかけに、各運航事業者でより厳格な品質チェック体制が取られることが期待されます。
Q4. 他の空飛ぶクルマも似たような設計ミスがある可能性は？
A. 現時点では他社の機体で同様の問題は報告されていませんが、製造元や設計思想が異なるため、各社ごとに精査と対応が必要です。今回の事故は、業界全体に品質管理の重要性を改めて突きつけた出来事といえます。
Q5. 7月12日からの再開デモ飛行は一般の人も見学できますか？
A. 飛行自体は見学者が入れないエリアで行われるため、近くから観覧することは難しい可能性があります。ただし、万博期間中には各社の飛行スケジュールに合わせて一般公開される日程もあるため、公式情報をチェックすることをおすすめします。
★まとめ：この記事のポイント
- 設計通りでない部品が原因で事故が発生、重大な製造ミスが浮き彫りに
- 7月12日から約3か月ぶりにデモ飛行が再開予定、安全対策は施されたが不安も残る
- 技術の進化には、製造・検査の体制強化が不可欠
- 他社も予定通り運航するが、業界全体の信頼性が試される
- 空飛ぶ未来には「技術力」以上に「社会の信頼」が鍵になる
