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工程表が守れない本当の理由|若手施工管理が最初に直すべきこと

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「工程表どおりに進まないんです」

施工管理をやっていれば、一度は必ずぶつかる悩みだと思います。

私自身、若手の頃は工程表をしっかり作っている”つもり”なのに、なぜか現場は遅れる。職人さんからは「段取りが悪い」と言われる。正直、何を直せばいいのかわかりませんでした。

はじめまして、たかしんです。

はじめまして、たかしんです。
施工管理として15年以上、工程管理と安全管理を中心に現場を見てきました。

この記事では、私が15年間の現場で学んだ

  • 工程表が守られない本当の原因
  • 若手施工管理が最初に直すべきポイント
  • 明日から使える実践的なチェックリスト

を、現場経験ベースでお伝えします。

目次

工程表が守られないのは、あなたの能力不足ではありません

まず、はっきり言います。

工程表が守られないのは、若手施工管理の能力不足が原因ではありません。

なぜ工程表を作っても現場は崩れるのか?

若手の頃ほど、

  1. 工程表を作る
  2. 日付を入れる
  3. 先輩にチェックしてもらう

ここまでやって「仕事した気」になりがちです。私もそうでした。

でも、現場はそれだけでは回りません。

なぜなら、工程表は「計画」であって「段取り」ではないからです。

工程表と段取りの違い

工程表=「いつ・何を・どのくらいの期間で」という計画書

例:「6月1日〜3日:基礎工事」

段取り=「それを実現するための具体的な準備」

例:基礎工事の段取りなら

  • 5月28日:生コン車の手配確認
  • 5月30日:鉄筋の現場搬入
  • 5月31日:測量・墨出し完了、型枠組立
  • 6月1日朝:職人5名の到着確認、天候確認

このように、工程表の「予定」を「実行可能」にするのが段取りです。

工程表が守られない現場に共通する3つの原因

国土交通省の「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」でも、工程遅延の主な要因として「事前準備不足」「情報伝達の不備」「優先順位の不明確さ」が挙げられています。

私が60以上の現場を見てきた中で、工程が崩れる現場には必ず以下の3つの共通点がありました。

原因① 段取り不足が工程表に反映されていない

工程表に日付は書いてある。でも、

  • 前工程の完了確認
  • 資材搬入のタイミング
  • 作業スペースの確保
  • 必要な職人の人数確認

こういった段取りが詰められていない。

【NG例】失敗した私の新人時代

「来週から外壁工事です」と口頭で伝えただけ ↓

  • 足場が組めていない
  • 材料が届いていない
  • 職人が別現場に行ってしまった

結果:工程3日遅れ、元請から厳重注意

【OK例】段取りを徹底した場合

1週間前:協力会社に書面で依頼、工程会議で共有 3日前:足場業者と現地確認、材料搬入日確定 前日:職人に電話で最終確認、天気予報チェック 当日:朝礼で作業内容と安全注意を全員で共有 ↓ 予定通り工事開始、スムーズに進行

👉 工程表が悪いのではなく、工程表の前にやるべき段取りが抜けているのが原因です。

原因② 情報共有不足で工程管理が崩れる

工程が崩れる現場では、必ずと言っていいほどこんな言葉が出ます。

「それ、聞いてないです」

変更や注意点が、

  • ギリギリ
  • 口頭だけ
  • 一部の人だけ

になっていないでしょうか。

若手ほど「自分で何とかしなきゃ」と抱え込みがちですが、情報共有が遅れるほど工程は崩れます。

情報共有の3段階ルール

建設業労働災害防止協会の調査では、工事の情報共有不足による手戻りが全体の約18%を占めるというデータもあります。

私が現場で実践している情報共有の基本は以下の通りです。

①1週間前:関係者全員に大枠を共有(朝礼・メール) ②前日:直接関わる職人・業者に詳細確認(対面・電話) ③当日朝:最終確認と注意点の再周知(朝礼)

情報の粒度は「相手が準備に困らないレベル」まで具体的に。

悪い例:「来週基礎工事やります」 良い例:「水曜午前に生コン打設、4t車3台入ります。北側ゲート使用、誘導員配置済み」

原因③ 工程の「優先順位」が決まっていない

全部大事。全部急ぎ。

こうなると、結果は一つです。

👉 全部遅れます。

工程には

  • 絶対に遅らせてはいけない工程(クリティカルパス)
  • 多少調整できる工程

があります。

優先順位を決める3つの判断基準

①クリティカルパか? → 全体工程に影響する作業か(基礎・躯体など後工程に直結する工事が最優先)

②納期との余裕はあるか? → 調整可能な日数があるか(余裕がない工程は優先度高)

③手戻りリスクは? → やり直しが効かない作業か(検査・埋設配管など、後から直せない作業は優先)

迷ったら「これが遅れたら全体がどれだけ遅れるか」を考えましょう。

この見極めができていないと、力の入れどころを間違えます。

若手施工管理が最初に直すべきは工程表ではない

ここが一番伝えたいポイントです。

若手が最初に直すべきは、工程表ではありません。

直すべきは「段取りの順番」

工程表を直す前に、必ずやることがあります。

  • 今日やる作業
  • 明日やる作業
  • 来週に影響する作業

この時間軸の整理です。

工程表は、そのあとでいい。

現場で必ず確認する3点

私は若手に、必ずこの3つを確認しろと言っています。

  1. 人:誰が来るのか、何人か
  2. モノ:材料・道具は揃っているか
  3. 情報:変更・注意点は伝わっているか

これが揃っていない工程は、ほぼ確実に崩れます。

建設業法においても、施工管理技術者の責務として「工事の工程管理」が明記されており、これには事前の準備確認も含まれます。

【無料DL】明日から使える段取りチェックリスト

ここからは、私が実際に新人指導で使っているチェックリストを公開します。

前日17時までに確認すること

  • 翌日の作業内容を工程表で確認
  • 職人の人数・到着時間を電話確認
  • 必要資材の在庫・搬入状況を確認
  • 図面・指示書を印刷、変更点をマーキング
  • 作業エリアの整理整頓状況を確認
  • 天気予報をチェック(雨天時の代替案を考える)
  • 重機・電源など設備の予約状況確認

当日朝礼前に確認すること

  • 天候の最終確認
  • 職人到着確認(遅刻・欠勤の有無)
  • 作業エリアの安全確認(整理整頓、危険物の有無)
  • 前日からの引き継ぎ事項の確認
  • 本日の作業手順を頭の中でシミュレーション

作業中に確認すること

  • 進捗を2時間おきに目視確認
  • 気になる点はその場でメモ
  • 職人から質問や相談があればすぐ対応
  • 想定と違う点があれば写真記録
  • クリティカルパスの作業は特に注視

終業時に確認すること

  • 本日の作業完了状況を記録
  • 翌日への引き継ぎ事項を整理
  • 遅延の兆候があれば上司に報告
  • 使用資材の残量確認
  • 翌日必要な段取りをリストアップ

工程が遅れたときに若手がやってはいけない行動

NG行動① 無理な工程短縮

遅れたからといって、

  • 作業を詰め込む
  • 職人任せにする
  • 安全や品質を削る

これは一番ダメです。後で必ず大きなトラブルになります。

厚生労働省の労働災害統計でも、無理な工程短縮が事故の誘因となったケースが報告されています。安全と品質は絶対に妥協してはいけません。

関連記事:KY活動が形骸化する原因とは?若手施工管理が安全管理で最初に直すべきこと

NG行動② 自分だけで何とかしようとする

工程遅れは、早く相談すれば小さく済みます。

相談すべき相手:

  • 直属の上司
  • 先輩施工管理
  • 協力会社の責任者

報告のタイミング

  • 軽微な遅れ(1日程度):当日中に口頭+記録
  • 中程度の遅れ(2〜3日):即座に上司へ報告、対策会議
  • 重大な遅れ(1週間以上):上司経由で元請・発注者へ報告

「怒られそう」で止まると、被害は大きくなります。

早期報告すれば応援や工程変更で対応できますが、隠して手遅れになると信頼を失います。

工程表が「機能する現場」に変わる考え方

工程表は「約束事」だと考える

工程表は、元請・下請・職人との共通の約束です。

曖昧な工程は、必ずトラブルの種になります。

国土交通省のガイドラインでも、「適正な工期設定」と「関係者間での工程共有」の重要性が強調されています。

工程は毎日”管理”して初めて意味がある

工程表は

  • 作って終わり
  • 見るだけ

では意味がありません。

毎日、ズレを確認して微調整する。これが工程管理です。

私の現場では、毎朝5分間の「工程ミニ会議」を実施しています。昨日の実績と今日の予定を確認するだけですが、これだけで大きな遅延を防げます。

デジタルツールで工程管理を効率化する

近年、建設業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいます。

おすすめの現場管理アプリ

  • ANDPAD:工程表・写真・図面を一元管理
  • Kizuku:現場の情報共有に特化
  • Photoruction:写真管理と報告書作成を効率化

Excelでもできる工程管理

アプリが使えない現場でも、Excelで以下を管理するだけで大きく変わります:

  • 日次作業予定表
  • 職人出面管理表
  • 資材搬入スケジュール表
  • 課題管理リスト

一般社団法人日本建設業連合会のWebサイトでも、ICT活用による工程管理の効率化事例が多数紹介されています。

段取りの悩み、ここで解決!Q&A

Q1. 工程表と段取りの違いが今ひとつわかりません。具体例で教えてください。

A: 工程表は「いつ・何を・どのくらいの期間で行うか」という計画書です。例えば「6月1日〜3日:基礎工事」と書かれます。

一方、段取りは「それを実現するための具体的な準備」です。基礎工事の段取りなら:

  • 5月28日:生コン車の手配確認
  • 5月30日:鉄筋の現場搬入
  • 5月31日:測量・墨出し完了、型枠組立
  • 6月1日朝:職人5名の到着確認、天候確認

このように、工程表の「予定」を「実行可能」にするのが段取りです。

Q2. 情報共有はどのタイミングで、どこまで詳しく行えばよいですか?

A: 基本は「3段階」で共有します:

①1週間前:関係者全員に大枠を共有(朝礼・メール) ②前日:直接関わる職人・業者に詳細確認(対面・電話) ③当日朝:最終確認と注意点の再周知(朝礼)

情報の粒度は「相手が準備に困らないレベル」です。「来週基礎工事やります」だけでなく、「水曜午前に生コン打設、4t車3台入ります。北側ゲート使用、誘導員配置済み」まで伝えます。

Q3. 優先順位の付け方がわかりません。判断基準はありますか?

A: 以下の3つの視点で判断してください:

①クリティカルパス:全体工程に影響する作業か → 基礎・躯体など後工程に直結する工事が最優先

②納期との余裕:調整可能な日数があるか → 余裕がない工程は優先度高

③手戻りリスク:やり直しが効かない作業か → 検査・埋設配管など、後から直せない作業は優先

迷ったら「これが遅れたら全体がどれだけ遅れるか」を考えましょう。

Q4. 工程が遅れてしまった場合、いつ・誰に報告すべきですか?

A: 報告は「遅れそうだと気づいた時点」で、すぐに直属の上司へ。

遅延の報告タイミング:

  • 軽微な遅れ(1日程度):当日中に口頭+記録
  • 中程度の遅れ(2〜3日):即座に上司へ報告、対策会議
  • 重大な遅れ(1週間以上):上司経由で元請・発注者へ報告

「怒られるから言いづらい」は最悪のパターンです。早期報告すれば応援や工程変更で対応できますが、隠して手遅れになると信頼を失います。

Q5. 段取りを学ぶために、若手が今日からできることは何ですか?

A: 以下の3つを習慣化してください:

①前日に「明日の作業イメージ」を3分考える 誰が・何を・どこで・何を使ってやるかを頭の中でシミュレーション

②現場で「詰まりポイント」を探す癖をつける 「ここに材料置いたら邪魔だな」「雨降ったらどうなる?」と考える

③先輩の段取りをメモする 「なぜこのタイミングで確認したのか」を後で聞いてみる

段取りは教科書では学べません。現場での「気づき」の積み重ねです。

工程遅延で落ち込んだときの考え方

工程管理は100%完璧には絶対できません。

ベテランでも予期しない天候、資材遅延、職人の急な欠勤などで遅れることはあります。

大切なのは:

  • 早めに報告して被害を最小化すること
  • 同じミスを繰り返さないよう記録すること
  • 失敗を次に活かす姿勢

「遅れた=自分がダメ」ではありません。

「遅れをどうリカバリーするか」が施工管理の腕の見せどころです。

私も新人時代は何度も失敗しました。工程を3日遅らせて元請に怒られたこともあります。でも、その失敗一つ一つが今の自分を作っています。

段取り力が身につくと、こんな未来が待っている

段取り力は、施工管理にとって最も重要なスキルの一つです。

これが身につくと:

職人や協力会社から信頼される施工管理になる
大規模現場の責任者を任されるようになる
後輩指導ができる立場になる
1級施工管理技士試験でも有利(実地経験として評価される)
トラブル対応力が向上し、現場が安定する

建設キャリアアップシステム(CCUS)でも、工程管理能力は技術者評価の重要項目として位置づけられています。

「建設キャリアアップシステム(CCUS)」は、技能者が、技能・経験に応じて適切に処遇される建設業を目指して、技能者の資格や現場での就業履歴等を登録・蓄積し、能力評価につなげる仕組みです。

引用元:建設市場整備:建設キャリアアップシステムポータル – 国土交通省

段取り力は、一生使えるスキルです。

まとめ|若手施工管理が覚えておくべき判断基準

工程表が守られない原因は「工程表」ではない → 段取り・情報共有・優先順位の問題

若手が最初に直すべきは段取りの順番 → 人・モノ・情報の3点確認を習慣化

工程管理は失敗しながら身につく → 早めの報告と記録が成長の鍵

さらに詳しく:もし現場で遅れが出た場合は?「絶対にやってはいけない挽回策」をチェック

最後に、15年の経験から若手のあなたに伝えたいこと

工程管理は、教科書では学べません。

現場で失敗して、悔しい思いをして、「次はこうしよう」と試行錯誤しながら身につけていくものです。

完璧な工程表を作ろうとするより、

「明日の作業で困ることは何か?」

この問いを毎日続けてください。

それが、10年後のあなたを信頼される施工管理に育てます。

段取り力は、一生使えるスキルです。今日からの現場で、少しずつ磨いていきましょう。

【参考資料・引用元】

  1. 国土交通省|建設業法令・基準 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000080.html
  2. 建設業振興基金|施工管理技術検定 https://www.fcip-shiken.jp/
  3. 厚生労働省|建設業における労働災害防止対策 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/index.html
  4. 国土交通省|建設工事施工統計調査 https://www.mlit.go.jp/statistics/details/kensetu_list.html
  5. 建設業労働災害防止協会 https://www.kensaibou.or.jp/
  6. 一般社団法人日本建設業連合会 https://www.nikkenren.com/
  7. 建設キャリアアップシステム(CCUS) https://www.ccus.jp/

※この記事の内容は一般的な建設現場を想定していますが、現場の規模や業態によって適切な方法は異なります。あなたの現場に合わせてカスタマイズしてご活用ください。

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この記事を書いた人

プロフィール:
はじめまして、たかしんです。
施工管理として15年以上、工程管理・安全管理を中心に現場を見てきました。
このサイトでは、若手施工管理が現場で詰まらないための「実務の判断基準」を発信しています。