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工程遅れを取り戻す時に若手施工管理が絶対にやってはいけない3つのこと

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現場で工程が遅れ始めると、若手施工管理のあなたは、今まさに焦っているかもしれません。

「このままじゃ工期に間に合わない」
「上司になんて報告しよう」
「何とか取り戻さないと」

その気持ち、私も痛いほどわかります。

はじめまして、たかしんです。
施工管理として15年以上、工程管理と安全管理を中心に現場を見てきました。

私自身、若手の頃は「とにかく取り戻す」ことだけを考えて、結果的に現場をさらに悪化させた経験があります。無理な工程短縮を強行し、職人さんとの信頼関係を損ない、最終的には1ヶ月以上の遅延を招いてしまいました。

この記事では、そんな失敗を繰り返さないために、工程遅れを取り戻そうとしたときに若手施工管理が絶対にやってはいけないこと、そして安全を守りながら工程を立て直す正しい考え方を、実体験と業界データをもとにお伝えします。

目次

工程遅れが起きたとき、若手ほどやりがちな行動

工程遅れが出ると、現場では一気に空気が変わります。その中で、経験の浅い若手施工管理ほど、焦りから次のような行動を取りがちです。

よくある「焦りの行動パターン」

  • とにかく工程を詰めようとする
  • 複数の作業を無理に同時並行させる
  • 残業・休日出勤で作業時間を延ばそうとする
  • 職人さんに「何とかしてもらう」と丸投げする
  • 現場を走り回り、その場対応を繰り返す
  • 根本原因を見ずに「気合い」で何とかしようとする

一見、頑張っているように見えますが、これらの行動はかなり危険です。

国土交通省の「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」でも、無理な工期短縮は品質低下や安全性の悪化を招くと指摘されています。

結果として、忙しいだけで工程は戻らない、それどころかさらに遅れが拡大するという悪循環に陥ります。

若手施工管理が絶対にやってはいけないこと3選

① 無理な工程短縮

これは断言できます。無理な工程短縮は、ほぼ確実に失敗します。

なぜ無理な工程短縮はダメなのか

工程を無理に詰めると、現場では次のようなことが起こります。

  • 手順が省略される
    例:型枠の締め付け確認を飛ばして次工程に進み、コンクリート打設後に漏れが発覚
  • 確認作業が飛ばされる
    例:配筋検査を簡略化し、後日の検査で指摘を受けて手戻り発生
  • 安全管理が後回しになる
    例:足場点検を省略し、小さな不具合が重大事故につながる

建設業労働災害防止協会の統計によれば、工程が逼迫している現場では、通常時と比較して労働災害の発生率が約1.5〜2倍に増加するというデータがあります。

結果として
→ 品質不良・事故・手戻りが発生
→ 工程はさらに遅れる
→ 信頼関係も損なわれる

これは別記事「KY活動が形骸化する原因とは?若手施工管理が安全管理で最初に直すべきこと」でも書いた内容と直結しています。工程が無理になると、安全も必ず無理になります。

② 職人さんに丸投げする

工程が遅れると、「職人さんなら何とかしてくれるはず」と思いたくなる気持ちは、私もよくわかります。

でも、これは適切な情報共有や安全確保をせずに責任を押し付ける行為であり、職人さんへの敬意を欠いた対応です。

重要な前提
職人さんは現場のプロであり、私たち施工管理にとって最も大切なパートナーです。「職人任せ」とは職人さんの技術を軽視する意味ではなく、施工管理としての役割を放棄して丸投げしてしまう状態を指します。

職人任せが生む悪循環

  1. 無理な作業を強いることになる
    安全確保や段取りが不十分なまま作業を依頼
  2. 文句やプレッシャーが職人さんに集中する
    「なんでできないんだ」という空気が現場に漂う
  3. 現場の雰囲気が悪くなる
    信頼関係が崩れ、コミュニケーションが取りづらくなる
  4. 結果、協力関係が崩壊し工程がさらに回らなくなる

国土交通省の「建設業法令遵守ガイドライン」でも、元請・下請間の適正な関係構築の重要性が強調されています。施工管理の役割は、職人さんが安全に、効率よく作業できる環境を整えることです。

③ 一人で抱え込む

これが一番多くて、一番危険な行動パターンです。

若手施工管理の多くが、次のような理由で工程遅れを一人で抱え込みます。

  • 「上司に報告したら怒られる」
  • 「先輩に聞くのが怖い」
  • 「自分の段取りが悪かったと思われたくない」
  • 「自分でなんとかしないと成長できない」

でも、はっきり言います。工程遅れは一人の問題ではありません。

天候、資材供給の遅延、設計変更、元請・発注者の判断など、様々な外的要因が絡み合って発生するものです。自分を責めすぎる必要はありません。

早く共有するほど選択肢は増える

タイミング対応の選択肢
早い段階(遅れる可能性がある時点)・工程調整で対応可能
・人員の追加配置
・作業順序の変更
・発注者への早期相談
ギリギリ(すでに大幅遅延)・無理な短縮しか残らない
・選択肢がほぼない
・損失が拡大

工程遅れは「早く言った人が正解」です。

多くの上司や先輩は、「遅れを隠されること」を最も嫌います。早めの報告は「責任感の現れ」として評価されることが多いのです。

工程遅れを取り戻すときの正しい考え方

では、工程が遅れたとき、どう考えて行動すればいいのか。正しいアプローチを解説します。

まず「遅れの原因」を4Mで分解する

闇雲に工程を詰めても、同じ遅れが必ず再発します。まずは原因を正確に把握することが最優先です。

4M分析で原因を整理する

製造業や建設業で広く使われる「4M」のフレームワークで、原因を分類しましょう。

分類具体例
Man(人)人手不足、職人の急な休み、技能不足、コミュニケーション不足
Machine(機械)重機の故障、機材の不足、搬入遅れ
Material(材料)資材の納期遅延、仕様変更、検査待ち
Method(方法)手順の誤り、情報共有不足、段取りミス、図面の不備

さらに「なぜなぜ分析」で深堀りする

表面的な原因だけでなく、根本原因まで掘り下げることが重要です。

例:人手不足が発生した場合

  • 人手不足 → なぜ? → 職人の休みが重なった
  • 職人の休みが重なった → なぜ? → 工程の事前共有が不足していた
  • 工程の事前共有が不足 → なぜ? → 朝礼での情報伝達が曖昧だった

このように原因を深堀りすることで、「次回どう防ぐか」が見えてきます。

この考え方は、別記事「工程表が守られない本当の理由|若手施工管理が最初に直すべきこと」でも詳しく解説しています。

取り戻すのは「全部」ではない

ここが重要なポイントです。

遅れた工程を全部元に戻そうとする必要はありません

クリティカルパスと非クリティカルパスを見極める

工程管理の基本は、「絶対に遅らせてはいけない工程」と「調整できる工程」を分けて考えることです。

絶対に遅らせてはいけない工程(クリティカルパス)調整できる工程
・躯体工事(基礎、柱、梁など)
・法定検査(中間検査、完了検査)
・引渡し日に直結する仕上げ工事
・外構工事の一部
・仮設の撤去
・並行して進められる設備工事

優先順位をつけることが工程管理です。

すべてを取り戻そうとすると、結果的にすべてが中途半端になり、さらなる遅延を招きます。

工程遅れと安全管理は切り離せない

ここも本当に重要なポイントです。

工程遅れが出ると、現場には次のような「危険な空気」が一気に広がります。

  • 焦り → 冷静な判断ができなくなる
  • 省略 → 確認作業を飛ばす
  • 無理 → 安全基準を下回る作業環境

工程遅れがある現場ほど、止める判断が遅れがちです。
工程のプレッシャーの中で、危険作業を止めるべきか迷ったときに、若手施工管理が判断するための基準
は、こちらの記事で詳しく解説しています。

安全が守れない工程は、正しい工程ではない

厚生労働省の労働災害統計を見ると、建設業の労働災害は「工程が逼迫している時期」に集中して発生しています。

だからこそ
工程を立て直すときほど、安全確認を丁寧にやる
焦っているときこそKYをいつもより丁寧に

逆説的ですが、これが結果的に最速の工程管理につながります。

なぜなら、事故が起これば工事停止、書類作成、行政対応で数日〜数週間のロスになるからです。安全第一は、工程管理の大前提なのです。

工程遅れ発生時の実践チェックリスト

焦っているときこそ、このチェックリストを使って冷静に状況を整理しましょう。

【工程遅れ対応チェックリスト】

  • 遅れの原因を4M(人・機械・材料・方法)で分類したか
  • 上司・現場代理人に報告したか(可能性段階でOK)
  • クリティカルパス(工期に直結する工程)への影響を確認したか
  • 協力業者と対策を協議したか(丸投げではなく一緒に考える)
  • 安全管理体制に変更や不備はないか
  • 発注者への報告が必要か確認したか
  • 「なぜなぜ分析」で根本原因を掘り下げたか
  • 次回同じ遅れが起きないための対策を考えたか

このチェックリストをコピーして、現場のデスクに貼っておくことをおすすめします。

実際の経験談:失敗と成功

失敗事例:若手時代に1ヶ月遅延させた経験

入社3年目の頃、私は鉄骨造の事務所ビル新築現場を担当していました。天候不良で基礎工事が3日遅れた際、「自分で何とかしなければ」と上司への報告を先延ばしにしました。

結果として:

  • 無理な工程短縮を試み、配筋検査を簡略化
  • 後日の検査で指摘を受け、やり直しで5日のロス
  • 職人さんへの説明不足で信頼関係が悪化
  • 最終的に1ヶ月以上の遅延と、約200万円のコスト増

この経験から学んだのは、「早めの報告と原因分析が最も重要」ということでした。

成功事例:2週間の遅延を1週間で挽回

一方、7年目に担当したマンション改修工事では、資材納期遅延で2週間の遅れが発生しました。この時は、すぐに上司に報告し、次の対応を取りました。

対応内容:

  1. 4M分析で原因を特定(Material:資材メーカーの製造遅れ)
  2. クリティカルパスを確認(外壁工事は遅らせられない)
  3. 非クリティカルパスの内装工事を先行
  4. 資材到着後、外壁工事に集中投入
  5. 安全確認は通常以上に丁寧に実施

結果:1週間で遅延を挽回し、品質・安全面でも問題なく完工しました。

よくある質問(Q&A)

Q1. 工程遅れを上司に報告するタイミングはいつが適切ですか?

A. 「遅れる可能性がある」と判断した時点で即報告が鉄則です。

具体的には:

  • 工程表との乖離が3日以上見込まれた段階
  • 天候不良・資材遅延などの外的要因が発生した時点
  • 職人の急な欠勤など予定外の事態が起きた瞬間

報告が早いほど、工程変更・人員調整・発注者への説明など選択肢が増えます。多くの上司は「遅れを隠されること」を最も嫌います。

Q2. 職人さんに無理を頼まざるを得ない状況になったらどうすべきですか?

A. まず「無理をお願いする」という前提自体を疑ってください。

どうしても避けられない場合は、次の手順を必ず踏みましょう。

  1. 安全確保を最優先 → 無理な作業環境で依頼しない
  2. 残業代・休日出勤の手当を明確化 → 事前に金額を提示
  3. 事前の丁寧な説明と感謝 → なぜ必要か、どう感謝するかを伝える
  4. 終了後の振り返り → 次回の改善策を一緒に考える

一方的な「お願い」は信頼関係を壊します。職人さんは対等なパートナーであることを忘れないでください。

Q3. 工程遅れの「原因分解」の具体的なやり方を教えてください

A. まず4M(Man人・Machine機械・Material材料・Method方法)で分類します。

次に「なぜなぜ分析」で深堀りします。

実例:人手不足の場合

  • 人手不足 → なぜ? → 職人の休みが重なった
  • 職人の休みが重なった → なぜ? → 事前の工程共有が不足
  • 工程共有が不足 → なぜ? → 朝礼での情報伝達が曖昧だった
  • 朝礼が曖昧 → なぜ? → 週間工程表を作成していなかった

このように、表面的な原因だけでなく根本原因まで掘り下げることが重要です。

Q4. 「遅らせてはいけない工程」と「調整できる工程」の判断基準は?

A. クリティカルパス(工期に直接影響する作業経路)上にあるかが最重要です。

遅らせてはいけない工程:

  • 躯体工事(基礎、柱、梁)
  • 法定検査(中間検査、完了検査)
  • 引渡し日に直結する仕上げ工事

調整可能な工程:

  • 外構工事の一部
  • 仮設撤去
  • 並行して進められる設備工事

判断に迷ったら、必ず上司や工程管理担当と相談してください。独断で判断するのは危険です。

Q5. 工程遅れで焦っているとき、安全確認を省略したくなる気持ちをどう抑えればいいですか?

A. 「安全確認を省略=さらなる遅延リスク」という認識を持ちましょう。

事故が起これば:

  • 工事停止(数日〜数週間)
  • 労働基準監督署への報告・対応
  • 行政処分のリスク
  • 信用失墜

結果的に、工程は大幅に遅れます

実践的な対策:

  • 「焦っているときこそKYをいつもより丁寧に」とルール化
  • 朝礼で全員に宣言する
  • チェックリストを必ず使う

安全第一は、結果的に最速の工程管理です。

まとめ|工程遅れに直面した若手施工管理の判断基準

最後に、この記事の重要ポイントをまとめます。

【絶対にやってはいけないこと】

  1. 無理な工程短縮はしない → 品質・安全が崩れ、さらに遅れる
  2. 職人さんに丸投げしない → 信頼関係が壊れ、協力が得られなくなる
  3. 一人で抱え込まない → 早めの報告が最善の対策

【正しい考え方】

  1. 原因を4Mで分解し、なぜなぜ分析で深堀りする
  2. クリティカルパスを見極め、優先順位を決める
  3. 工程と安全は必ずセットで考える

最後に:焦っているあなたへ

工程遅れを取り戻す力は、現場を無理させない判断力です。

焦っているときこそ、一度立ち止まってください。

  • 本当に全部を取り戻す必要があるのか?
  • 安全を犠牲にしていないか?
  • 一人で抱え込んでいないか?

この3つを自問自答するだけで、見える景色が変わります。

工程遅れの責任は、決してあなた一人にあるわけではありません。天候、資材供給、設計変更、元請・発注者の判断など、様々な要因が絡み合って発生します。

大切なのは、自分を責めすぎず、「次はどうすべきか」を学ぶことです。

あなたの現場が、無理なく、安全に、そして確実に前に進むことを願っています。

参考資料・引用元

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この記事を書いた人

プロフィール:
はじめまして、たかしんです。
施工管理として15年以上、工程管理・安全管理を中心に現場を見てきました。
このサイトでは、若手施工管理が現場で詰まらないための「実務の判断基準」を発信しています。