「自分は工程管理が苦手なのかもしれない」そう感じていませんか?
工程表は作っている。指示も出している。でもなぜか工程が崩れる。
はじめまして、たかしんです。
施工管理として15年以上、工程管理と安全管理を中心に現場を見てきました。
結論:工程管理が苦手なのは能力の問題ではない
最初に大事なことをお伝えします。
工程管理に苦手意識があるのは、センスがないからでも、頭が悪いからでもありません。
多くの場合、「考え方」と「見るポイント」がズレているだけです。
目次
工程管理が苦手な施工管理に共通する5つの特徴

ここからが本題です。当てはまるものが多いほど、工程が崩れやすくなります。
共通点① 工程表を作れば仕事をした気になっている
よくある状況
- 工程表はきれいに作成されている
- でも更新されない
- 現場の実態とズレている
なぜ問題なのか: 工程表は「作ること」が目的ではなく、「守るための道具」です。作っただけで安心してしまうと、現場は工程表を見なくなり、結果的に誰も工程を意識しなくなります。
実例: ある住宅新築現場(工期5ヶ月)で、初回作成した工程表が一度も更新されないまま2ヶ月が経過。実際の進捗は工程表より2週間遅れていましたが、担当者は「工程表はある」という安心感から気づくのが遅れ、最終的に1ヶ月の遅延となりました。
改善のポイント: 工程表は週1回必ず更新し、朝礼で共有する。遅れが発生したら即座に更新し、関係者全員に影響範囲を伝える。
工程表が機能しない理由は
「工程表が守れない本当の理由|若手施工管理が最初に直すべきこと」
で詳しく書いています。
共通点② 遅れに気づくのが遅い
よくある状況
- 完了報告を待ってから確認する
- 数字だけを見ている
- 現場での違和感を無視する
なぜ問題なのか: 遅れは「完了予定日」になって初めて発覚するものではありません。実は数日前から「予兆」が現場に出ています。この予兆を見逃すと、対応が後手に回り、遅延が拡大します。
実例: マンション新築工事で、基礎工事の鉄筋組立が予定より2日遅れていました。担当者は「完了報告待ち」の姿勢だったため気づいたのは予定日当日。結果、型枠工事が3日遅延し、全体工程に影響が出ました。
もし2日前に気づいていれば、人員を1名追加するだけで予定通り完了できたケースでした。
工程遅れの予兆サイン
- 朝の段取りに時間がかかっている
- 職人の動きに迷いが見える
- 資材が予定通り届いていない
- 天候不良日が続いている
- 「たぶん間に合う」という曖昧な返答
改善のポイント: 朝一と昼過ぎに現場を巡回し、進捗を目視確認。「今日中に終わるか?」ではなく「今、予定の何割まで進んでいるか?」を確認する習慣をつける。
前兆については
「工程遅れが起きそうな現場で必ず出る5つの危険サイン|若手施工管理向け」
を必ず押さえてください。
共通点③ 無理な工程を「何とかなる」で通している
よくある状況
- 詰めればいけるはず
- 残業で対応すればOK
- ベテラン任せにする
なぜ問題なのか: これは工程管理ではなく、希望的観測です。無理な工程は、必ずどこかで破綻します。そして破綻したときのダメージは、最初から適正工程を組んだ場合の何倍にもなります。
無理な工程が引き起こすリスク
- 職人の疲労蓄積による品質低下
- 安全意識の低下、事故リスク増大
- 手直し工事の発生で結果的に工期延長
- 職人の離脱、次回以降の協力拒否
- 原価の大幅な悪化
実例: 工場建設現場で、経営層から「2週間短縮」の指示が出ました。担当者は「残業で何とかします」と応じましたが、連続作業による疲労で配筋ミスが発生。検査でNG、やり直しとなり、結果的に当初の工程より1週間遅れることになりました。
改善のポイント: 上司から無理な工程を指示されたときは、「できない理由」を数字と根拠で説明します。その上で「この条件なら可能」という代替案を必ず用意して提案します。感情論ではなく、ロジックで交渉することが重要です。
無理な工程の末路は
「無理な工程を組むと何が起きるのか|施工管理が絶対に軽く見てはいけない現実」
で具体的に解説しています。
共通点④ 工程と安全を別物として考えている
よくある状況
- 工程優先で考える
- 安全は現場任せ
- 「急げ」と指示してしまう
なぜ問題なのか: この考え方の現場ほど、実は工程が崩れます。なぜなら、安全を軽視した現場では事故が起き、事故が起きれば工事は止まるからです。さらに、職人の信頼を失い、次回以降の協力も得られなくなります。
国土交通省の「建設業における安全衛生対策」でも、適正工期と安全確保は一体のものとして扱われています。
実例: 工程遅れを取り戻そうと、足場の点検を省略して作業を急がせた現場がありました。結果、足場の一部が不安定な状態で作業が行われ、小さな事故が発生。労働基準監督署の立ち入り調査となり、工事が2週間停止しました。
改善のポイント: 朝礼で工程と安全の両方を必ず確認する。「今日の重点作業」と「今日の危険ポイント」をセットで共有する。安全確保のための時間は、工程に最初から組み込んでおく。
実務の型は
「【施工管理向け】安全管理チェックリスト|若手が朝一で確認すべきポイント 」
と一緒に身につけてください。
共通点⑤ 優先順位がはっきりしていない
よくある状況
- 全部大事
- 全部急ぎ
- 結果、すべてが未完了になってしまう
なぜ問題なのか: 施工管理の仕事は、常に複数の課題が同時に発生します。すべてに同じ力を注ぐと、エネルギーが分散し、どれも中途半端になります。工程管理ができる人は、守る順番が明確に決まっています。
工程管理の優先順位(鉄則)
- 安全 – 人命最優先、これは絶対
- 工程 – 全体への影響を最小化
- 品質 – 手直しは工程を崩す
- 原価 – 適正工程が最も原価を守る
実例: 複数の業者が同時に入る現場で、担当者がすべての業者に「急いでください」とだけ伝えていました。結果、作業エリアが混雑し、互いに干渉。全体の作業効率が落ち、誰も予定通り終わりませんでした。
正しくは、「A社は午前中に1階、B社は午後から2階」のようにゾーニングと時間差で調整すべきでした。
改善のポイント: 朝一で「今日、絶対に守るべきもの」を3つ以内に絞る。それ以外は「できればやる」レベルに位置づける。工程が遅れたときは、クリティカルパス(全体工程に影響する作業)を最優先で守る。
この優先順位は
「工程が遅れたとき施工管理は何から手を付けるべきか|焦らないための判断順」
で詳しく説明しています。
工程管理に苦手意識がある人が最初に直すべきこと
全部を一気に直す必要はありません。まずはこの3つだけ実践してください。
① 朝一で工程を確認する(5分でOK)
具体的な確認項目
- 今日完了予定の作業は何か
- 昨日の積み残しはないか
- 資材・人員は揃っているか
- 天候は問題ないか
- 他業者との干渉はないか
この5項目を毎朝チェックするだけで、遅れの8割は防げます。
② 無理な部分を言語化する
「何となく無理そう」ではなく、なぜ無理なのかを明確にします。
言語化の例
- NG:「ちょっと厳しいかも」
- OK:「鉄筋工が2名だが、この面積なら3名必要。1日遅れる可能性がある」
数字と根拠で説明できれば、上司も協力業者も動いてくれます。
③ 危険な工程を放置しない
「危険な工程」とは
- 無理な短縮がかかっている
- 人員不足が明らか
- 天候リスクが高い
- 複数業者が干渉する
これらを見つけたら、即座に対策を打つか、関係者に共有します。放置は最悪の選択です。
【実践ツール】工程管理チェックリスト

朝一で確認すべきポイントをリスト化しました。印刷して現場で使ってください。
朝一チェックリスト(所要時間5分)
□ 今日の完了予定作業を確認したか
□ 昨日の積み残しを把握したか
□ 資材の納品予定を確認したか
□ 職人・作業員の人数を確認したか
□ 天気予報をチェックしたか
□ 他業者との作業エリア調整をしたか
□ 安全上の危険箇所を確認したか
□ 工程表と現場の進捗にズレはないか
このチェックリストを毎朝実行するだけで、工程管理の精度は確実に上がります。
私自身の失敗談:工程表を作って満足していた新人時代
正直に告白します。私も新人時代、共通点①に完全に当てはまっていました。
入社2年目、初めて任された小規模改修工事。Excel で立派な工程表を作成し、上司に褒められて満足。しかし現場では誰も工程表を見ておらず、気づいたら予定より1週間遅れていました。
上司に怒られたときの一言が今も忘れられません。
「工程表は作るためにあるんじゃない。守るためにあるんだ」
その日から、工程表を毎週更新し、朝礼で必ず共有するようになりました。すると、職人たちも工程を意識するようになり、次の現場では予定通り完工できました。
この経験が、私の工程管理の原点です。
工程管理は「経験」より「型」で上達する
よく「工程管理は経験がすべて」と言われますが、これは半分正解で半分間違いです。
確かに経験は重要です。しかし、正しい「型」を持たずに経験を重ねても、同じミスを繰り返すだけです。
逆に、型を持っていれば、経験年数が浅くても十分に現場を回せます。
実際、私が指導した新人は、入社6ヶ月で中規模現場の工程管理を任されるようになりました。特別な才能があったわけではなく、型を身につけていたからです。
よくある質問(Q&A)
Q1. 工程表の更新頻度はどのくらいが適切ですか?
A. 規模にもよりますが、週次更新が基本です。大規模現場や複数工区がある場合は日次で部分更新し、週1回全体を見直すのが理想的です。遅れが発生した際は即座に更新し、関係者と共有することが重要です。
更新のタイミングは、週末の午後がおすすめ。1週間の実績を振り返り、翌週の予定を調整します。
Q2. 経験の浅い職人に工程を守ってもらうにはどうすればいいですか?
A. 「なぜこの工程なのか」の理由を説明することが最重要です。
単に「急いで」ではなく、「次工程の型枠工事が3日後に入るため、2日後までに鉄筋を仕上げる必要があります」と具体的に伝えます。
また、日々の進捗確認で小まめに声をかけ、困りごとを早期にキャッチすることも効果的です。職人は「理由」が分かれば協力してくれます。
Q3. 複数の業者が同時に入る工程で、調整が難しいです。コツはありますか?
A. 「ゾーニング」と「時間差作業」がポイントです。
ゾーニングの例
- 1階をA社、2階をB社のように階層で分ける
- 東側をA社、西側をB社のようにエリアで分ける
時間差作業の例
- 午前中は電気工事、午後は空調工事
- 重機作業は午前、人力作業は午後
週1回の業者会議で、翌週の入場予定を全体共有することも必須です。事前調整が9割です。
Q4. 工程管理と原価管理、どちらを優先すべきですか?
A. 両立が理想ですが、優先順位は「安全>工程>原価」が鉄則です。
ただし、無理な工程は結果的に手直しや事故で原価を悪化させます。適正工程を組むことが、実は最も原価を守る方法です。
国土交通省の「適正な工期設定等のためのガイドライン」でも、無理な工期短縮は品質・安全・働き方すべてに悪影響を及ぼすことが指摘されています。
Q5. 上司から「無理な工程」を指示されたとき、どう対応すべきですか?
A. まず「できない理由」を数字と根拠で説明します。
説明の例: 「この面積(200㎡)の鉄筋組立を2日で完了するには、鉄筋工が最低4名必要です。現在確保できているのは2名なので、通常工程では4日かかります。2日で完了するには、追加で2名の手配と、残業代約15万円の予算が必要です」
その上で、「この条件なら可能」という代替案を必ず用意して提案します。
感情論ではなく、ロジックで交渉することが重要です。
まとめ|工程管理に苦手意識があるのは伸びしろ
最後にまとめです。
- 工程管理に苦手意識があるのは珍しくない
- 共通点を知れば改善できる
- 工程表だけでは管理できない
- 無理な工程は最初に止める
- 型を持てば、誰でも上達する
工程管理は才能ではなく、技術です。正しい「型」を知り、毎日少しずつ実践すれば、誰でも必ず上達します。
明日の朝一番から、まず1つだけ試してみてください。その小さな一歩が、あなたの現場を変えるはずです。
次に読むべき記事(関連記事)
- 工程管理チェックリスト|若手が朝一で確認すべきポイント
- 安全管理チェックリスト|若手が朝一で確認すべきポイント
- 工程管理ができる施工管理の思考法
- 工程が遅れたとき施工管理は何から手を付けるべきか
- 無理な工程を組むと何が起きるのか
参考資料・関連リンク
国土交通省 適正な工期設定等のためのガイドライン
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk2_000089.html
厚生労働省 建設業における安全衛生対策
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/kensetsu.html
国土交通省 建設業法令遵守ガイドライン
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000083.html
一般財団法人 建設業振興基金(施工管理技士情報)
https://www.kensetsu-kikin.or.jp/

