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若手施工管理の頃、危険だと分かっていた作業を止められず後悔した話

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あの作業を止めていれば――
もしかしたら、誰かの命を救えていたかもしれない。

今でも、ふとした瞬間に思い出す現場があります。
それは、私が施工管理3年目の冬のことでした。

「危ないな」とは思っていた。
「一声かけた方がいい」とも感じていた。

でも、結局、私はその作業を止められませんでした。

結果として大きな事故にはならなかったものの、これは運が良かっただけです。同じ状況なら、重大事故になっていた可能性は十分にありました。

「もしあの時…」という後悔が、今でも心に残っています。

はじめまして、たかしんです。
施工管理として15年以上、工程管理と安全管理を中心に現場を見てきました。

この記事では、若手施工管理の頃に危険作業を止められなかった実体験と、そこから学んだ二度と後悔しないための具体的な判断基準について書きます。

もしあなたが同じ状況だったら、どうしますか?
おそらく、多くの若手施工管理が同じように迷うはずです。

私が止められなかった理由は、決して特別なものではありません。

この記事で学べること

✅ 危険作業を止められない3つの心理的要因
✅ 工程プレッシャー下での正しい判断基準
✅ ベテラン職人への声のかけ方
✅ KY活動を実効性あるものにする方法
✅ 明日から実践できる安全管理アクション

目次

その現場は、工程がかなり厳しかった

当時の私は、施工管理になってまだ3年。
現場は工程が詰まりに詰まっていました。

  • 雨続きで2週間の遅れ
  • 他業種の段取りズレによる玉突き影響
  • 元請からの工程回復プレッシャー

「何とか取り戻さないといけない」
そんな空気が、現場全体を覆っていました。

今思えば、これは典型的な「工程遅れを無理に取り戻そうとして失敗する現場」でした。

厚生労働省の労働災害統計によると、建設業の死亡災害は年間約300件発生しており、そのうち約40%が墜落・転落です。こうした事故の多くは、工程プレッシャーが安全意識を鈍らせる状況で起きています。

補足:工程遅延と安全管理の関係
工程が厳しい状況下では、発注者・元請・下請すべてがプレッシャーを感じます。これは個人の問題ではなく、建設業界の構造的な課題です。

危ないと感じた作業内容

その日の作業は、複数業者が同時に入る立体交差作業でした。

具体的には:

  • 上階(3階):鉄骨溶接作業(火花が飛ぶ)
  • 下階(2階):別業者による電気配線作業
  • 人の動線も交差:資材搬入と並行

私は朝の段階で、「これ、ちょっと危ないな」と感じていました。

なぜ危険だと思ったのか?

  1. 垂直作業の原則違反:火花が真下の作業者に落下する可能性
  2. 養生が不十分:防炎シートの範囲が狭い
  3. 作業エリアの明確な区分けがない:動線が交錯している

しかし、その日のKY(危険予知)活動では、

  • 「落下注意」
  • 「足元注意」

と、いつも通りの抽象的な内容で終わっていました。

これは「KY活動の形骸化」の典型例です。
具体的な危険箇所を共有せず、記録のための活動になっていました。

なぜ私は止められなかったのか|3つの心理的要因

今なら、止められなかった理由がはっきりと分かります。

理由① ベテラン職人だった

作業していたのは、経験豊富なベテラン職人さんでした。

  • 同じ作業を何十年もやっている
  • 過去にも問題が起きたことがない
  • 技術的には確実にこなせる

自分のような若手が口を出すのは失礼では?
そう思ってしまいました。

ベテランの方は技術は確かですが、”慣れ”が逆に危険を見落とす原因になることもあります。
これは個人の能力の問題ではなく、人間の認知特性です。

理由② 工程がさらに遅れるのが怖かった

作業を止めれば、

  • 段取り変更が必要
  • 養生の追加設置
  • 作業順序の組み直し
  • 半日〜1日の遅れ

が発生します。

「今日これを止めたら、もっと工程が苦しくなる」
「自分が責められるかもしれない」

その不安が、判断を鈍らせました。

工程のプレッシャーは、安全に対する判断を確実に狂わせます。

理由③ 「事故にはならないだろう」という甘さ

一番ダメだったのはこれです。

  • 「多分、大丈夫」
  • 「今までもやってるし」
  • 「ベテランだから分かってるはず」

この”多分”が、一番危ない。

労働安全衛生法では、「危険を予見できた場合、安全配慮義務を負う」と定められています。つまり、危ないと思った時点で、止める責任が発生しているのです。

実際に起きたこと|あの瞬間の後悔

幸い、大事故にはなりませんでした。

しかし、

  • 火花が下階作業者の近くに落ちた
  • 作業者が慌てて避ける場面があった
  • 一瞬ヒヤッとする動きがあった

その瞬間、「止めておけばよかった」と強く思いました。

事故が起きてからでは、施工管理は何もできません。

もし実際に事故になっていたら:

  • 労働安全衛生法違反(安全配慮義務違反)
  • 業務上過失致死傷罪の可能性
  • 建設業法に基づく営業停止・許可取消
  • 民事での損害賠償責任
  • そして、一生消えない精神的な後悔

この経験から学んだ3つの教訓

この現場以降、私の判断基準は大きく変わりました。

教訓① 迷ったら止めるが正解

  • 判断に迷う
  • ちょっとでも違和感がある

👉 それは止めるサインです。

「大丈夫だろう」で進めて良かったことは、10年間で一度もありません。
逆に、「念のため止めた」ことで助かった場面は数え切れません。

あなたの”何か変だな”という直感は、誰かの命を救うサインかもしれません。

教訓② 工程のプレッシャーは判断を狂わせる

工程が厳しいほど、

  • 危険を見ない
  • 見ないふりをする
  • 「今日だけは」と例外を作る

ようになります。

⚠️ 工程の無理は、安全の無理です。

危険サインのチェックリスト:

  • ✅ 安全ミーティングが短縮・省略される
  • ✅ 「急げ」という言葉が頻繁に出る
  • ✅ 段取り変更が多発する
  • ✅ 残業・休日出勤が常態化する

これらが複数該当したら、元請や発注者と工程再調整の協議をすべきタイミングです。

教訓③ KYは「書いたか」ではなく「伝わったか」

あの時のKYは、

  • 内容が薄い
  • 具体性がない
  • 誰の記憶にも残らない

形だけの活動でした。

実効性のあるKY活動にするポイント:

  1. 作業者本人に危険箇所を言わせる(施工管理が一方的に話さない)
  2. 「今日のこの作業で」という具体性(一般論を避ける)
  3. 写真や図を使った視覚的な共有
  4. 前日のヒヤリハット事例の共有

「記録のため」ではなく、「今日の命を守るため」という意識改革が必要です。

若手施工管理の方へ|ベテラン職人への声のかけ方

「若手がベテランに注意するなんて無理」
そう思う気持ち、よく分かります。

私が実践している方法をご紹介します。

✅ 方法① 「注意」ではなく「確認」として伝える

NG例:
「それ危ないですよ!」

OK例:
「すみません、ちょっと確認させてください。下で作業している方への火花の養生は、これで大丈夫でしょうか?」

✅ 方法② 元請の先輩や所長を通じて伝える

若手が直接言いづらい場合は、間接的なアプローチも有効です。

「○○さんに確認したいことがあるんですが、一緒に見ていただけませんか?」

✅ 方法③ 「会社のルール」として伝える

個人の意見ではなく、組織の判断として伝えます。

「会社の安全基準で、垂直作業の場合は○○することになっているので、お願いできますでしょうか」

人間関係を壊さずに安全を確保するには、伝え方の工夫が不可欠です。

明日から実践できる3つのアクション

アクション① 朝礼で「今日の一番のリスク」を1つ宣言する

一般的な「安全第一で」ではなく、

「今日は3階と2階の同時作業があるので、垂直作業に特に注意します」

と、具体的に宣言する習慣をつけましょう。

アクション② 「違和感メモ」を作り、気になったことを記録

スマホのメモでも手帳でもOK。

  • 「○時○分、○○が気になった」
  • 「なぜ気になったのか?」

を書き留めることで、自分の直感の精度が上がります

アクション③ 月1回、過去の労働災害事例を読む時間を作る

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、ヒヤリハット事例が検索できます。

👉 ヒヤリハット事例検索

他人の失敗から学ぶことで、同じ過ちを防げます。

若手施工管理からよく相談される質問

Q1. ベテラン職人に対して若手が注意するのは、現実的に可能なのでしょうか?

A. 確かに難しい場面もあります。私が実践している方法は以下です:

  • 「注意する」ではなく「確認させてください」という姿勢
  • 元請の先輩や所長を通じて伝える(間接的なアプローチ)
  • 「会社のルールで」と、個人ではなく組織の判断として伝える

人間関係を壊さずに安全を確保するには、伝え方の工夫が不可欠です。

上記の「若手施工管理の方へ」のセクションで、具体的な声のかけ方を詳しく解説しています。

Q2. 工程が遅れている時、どのタイミングで「無理だ」と判断すればいいですか?

A. 以下のサインが出たら危険信号です:

  • 安全ミーティングが短縮・省略される
  • 「急げ」という言葉が頻繁に出る
  • 段取り変更が多発する
  • 残業・休日出勤が常態化する

この状態なら、元請や発注者と工程再調整の協議をすべきタイミングです。

工程が厳しい状況下では、発注者・元請・下請すべてがプレッシャーを感じます。これは個人の問題ではなく、業界構造の問題として捉え、早めに関係者と協議することが重要です。

Q3. KY活動を「形だけ」から「実効性のあるもの」にするには?

A. 私が意識しているポイント:

  1. 作業者本人に危険箇所を言わせる(施工管理が一方的に話さない)
  2. 「今日のこの作業で」という具体性(一般論を避ける)
  3. 写真や図を使った視覚的な共有
  4. 前日のヒヤリハット事例の共有

「記録のため」ではなく、「今日の命を守るため」という意識改革が必要です。

建設業労働災害防止協会(建災防)が公開している危険予知訓練の進め方も参考になります。

Q4. もし実際に事故が起きてしまった場合、施工管理はどんな責任を問われますか?

A. 法的責任は深刻です:

  • 労働安全衛生法違反(安全配慮義務違反)
  • 業務上過失致死傷罪の可能性
  • 建設業法に基づく営業停止・許可取消
  • 損害賠償責任(民事)

さらに、精神的な後悔は一生残ります。

私の経験談はヒヤリで済みましましたが、これは運が良かっただけです。実際の事故になっていたらと思うと、今でも震えます。

労働安全衛生法では、「危険を予見できた場合、安全配慮義務を負う」と定められています。つまり、危ないと思った時点で、止める責任が発生しているのです。

参考:労働安全衛生法(e-Gov法令検索)

Q5. 「危ない」と感じる直感を磨くには、どうすればいいですか?

A. 以下の訓練が有効です:

  • 過去の事故事例を定期的に読む(ヒヤリハット事例集)
  • ベテランの視点を学ぶ(「なぜここを気にするのか」を質問)
  • 毎日現場で1つ「危険箇所」を見つける習慣
  • 「もし自分がここで作業するなら」と想像する

直感は、経験と知識の蓄積から生まれます。

中央労働災害防止協会の安全衛生情報センターでは、様々な事故事例やリスクアセスメント手法が公開されています。

まとめ|失敗談から伝えたい4つの判断基準

  1. 危ないと感じた直感は、大体合っている
  2. ベテラン相手でも止めていい(伝え方の工夫は必要)
  3. 工程より命が優先
  4. 迷ったら止める

最後に|若手施工管理のあなたへ

この話で、自分を責めてほしくはありません。

若手施工管理は、

  • 経験が少ない
  • 判断に迷う
  • プレッシャーが強い

それが普通です。

でも、一つだけ覚えておいてください。

止められなかった後悔は、何年経っても残ります。

逆に言えば、

あなたの一声が、誰かの命を救うかもしれません。

たかしんルール

「若手の頃の失敗は、後輩を守るための基準に変えられる」

あなたの”何か変だな”という直感は、
誰かの命を救うサインかもしれません。

迷ったら、止める。
工程より、命。

この記事が、あなたの判断を後押しする
小さなきっかけになれば幸いです。

参考資料・関連リンク

※この記事は、当時の判断を正当化するためではありません。私自身の未熟さと、業界全体で考えるべき問題として共有したいと思っています。

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この記事を書いた人

プロフィール:
はじめまして、たかしんです。
施工管理として15年以上、工程管理・安全管理を中心に現場を見てきました。
このサイトでは、若手施工管理が現場で詰まらないための「実務の判断基準」を発信しています。