その言葉、本当にきついですよね。
「現場監督は底辺」
SNSでたまたま目にしたのか、知人にぽろっと言われたのか、あるいは自分で検索してしまったのか。
どんな経緯であれ、その言葉を受け取ってしまったあなたの気持ちは、僕にはよくわかります。
こんにちは、たかしんです。1級建築施工管理技士として、施工管理の現場を15年続けてきました。
毎朝早く起きて、天気や職人さんの体調を気にして、図面と睨み合いながら工程を組んで、トラブルが起きれば真っ先に現場へ向かう。そんな日々を積み重ねてきたのに、「底辺」の一言で片付けられると、正直、言葉を失います。
だからこそ、はっきり言わせてください。
あなたは底辺ではありません。
感情論ではなく、データと現実をもとに、それを一緒に整理していきます。
目次
なぜ「底辺」と言われてしまうのか? 背景を冷静に見る

まず、否定から入るつもりはありません。そう言われる背景には、いくつか理由があるのは事実です。
労働時間の長さとブラックなイメージ 朝が早く、帰りが遅い。休日も現場から電話がかかってくる。外から見ると「ブラック」に映りやすい職種であることは否定できません。実際、建設業界には長時間労働が常態化している会社が存在してきたのも事実です。
見た目のイメージ ヘルメットに作業服、現場の泥。「スーツで働く職種」と単純比較されると、見た目だけで判断されることがあります。それは職業差別に近い偏見ですが、残念ながら存在しています。
失敗が目立ち、成果が見えにくい 工期が遅れたり、事故が起きると「監督が悪い」と言われやすい。一方で、何事もなく工事が完了しても、それを称賛してくれる人はほとんどいません。成果が空気のように当たり前に扱われる仕事です。
ただ、これらはあくまでも「そう見えやすい理由」であって、現場監督という職業の本質的な価値を示すものではありません。
現実のデータで見る「現場監督」の実態
感情ではなく、数字と事実で見ていきましょう。
国家資格が必要な専門職
1級建築施工管理技士は、国土交通省が管轄する国家資格です。法規・工程管理・品質管理・安全管理など幅広い専門知識が求められ、令和7年度の1級建築施工管理技士(第二次検定)の合格率は約39%(国土交通省発表)。誰でも簡単に取れるものではありません。
参考:1級 建築施工管理技術検定のご案内 | 建築・電気工事施工管理技術検定 | 一般財団法人建設業振興基金 試験研修本部
年収は「底辺」どころか業界平均を上回る水準
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、建設業の平均賃金は全産業平均と比較しても決して低くない水準にあります。施工管理職に絞ると、経験・資格・会社規模によって差はありますが、一般的な目安として以下のようなレンジが見られます。
- 20代後半:400〜500万円
- 30代:500〜700万円
- 1級資格保持+経験者:700万円以上も珍しくない
業界全体が「変わろうとしている」
2024年4月、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました(いわゆる「2024年問題」への対応)。週休2日制の導入を進める企業が増え、国土交通省も働き方改革を強力に推進しています。業界が変わろうとしているのは、明確な事実です。
現場監督が「現場を動かしている」という本質

職人さんが安全に、効率よく作業できるのは、誰かが工程を組んでいるからです。図面が整理されているからです。材料が適切なタイミングで手配されているからです。
その「誰か」が、現場監督です。
建物は完成すれば、施主も利用者も「あの監督が作った」とは思いません。でも、その建物が存在するのは間違いなく、現場監督がいたからです。
責任が重いことは、価値が低いことではありません。むしろ逆です。
本当につらいのは「職業」ではなく「環境」かもしれない
ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。
もし今あなたが、毎日怒鳴られ、休めず、人手が足りず、3年以上改善が見えない状態にあるなら——それは「現場監督という職業がつらい」のではなく、「今の職場環境がつらい」のです。
同じ施工管理でも、残業が少なく週休2日が徹底されている会社は実在します。若手をきちんと育てる教育体制がある会社も、現場監督を正当に評価する会社もあります。
僕自身も、過去に「この仕事は自分には向いていないのかもしれない」と感じた時期がありました。でも後から気づいたのは、つらかったのは仕事そのものではなく、その会社の文化だったということです。
それでも「辞めたい」と感じているなら
辞めることを責めるつもりは一切ありません。
ストレスが限界に達している、家族との時間を優先したい、体力的に続けることが難しい——それは人生の優先順位の問題であって、逃げでも負けでもありません。
ただ、辞める前に知っておいてほしいことがあります。施工管理の経験は、市場価値として評価されます。工程管理能力、多職種との調整力、危機対応力。これらは建設業に限らず、製造業・不動産・インフラ系など幅広い業界で求められるスキルです。
「底辺だから辞める」ではなく、「自分の人生の方向を選び直す」という視点で考えてほしいのです。
よくある疑問に答えるQ&A
Q1. 現場監督の平均年収はどのくらいですか? 会社・地域・資格の有無によって幅がありますが、30代で500〜700万円台は珍しくありません。1級施工管理技士を取得し経験を積めば、700万円以上を狙える会社も存在します。厚生労働省の賃金構造基本統計調査でも、建設業の賃金水準は全産業平均と比較して決して低くないことが示されています。
Q2. ブラックな会社が多いのは本当ですか? 過去には長時間労働が常態化していた会社が多かったのは事実です。ただ2024年以降、建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、業界全体が変わりつつあります。求人票で「週休2日(完全)」「残業時間の平均実績」を確認するのが見分けるポイントです。
Q3. 施工管理の経験は転職に活かせますか? 十分に活かせます。工程管理・多職種調整・リスク管理のスキルは、製造業・不動産・設備管理・プロジェクトマネジメント系職種など、幅広い業界で評価されます。「建設業しか通用しない経験」ではありません。
Q4. 「底辺」と言っている人は何を根拠にしているのですか? 主に「労働時間の長さ」「肉体労働のイメージ」「一部ブラック企業の報道」が根拠になっていることがほとんどです。実態の数字(年収・資格難易度・社会的役割)を知らずに発言しているケースが大半です。気にする必要はありませんが、「なぜそう見えるか」を知っておくと気持ちが楽になります。
Q5. 1級建築施工管理技士はどのくらい難しいですか? 令和7年度の第二次検定合格率は約39%です(国土交通省発表)。決して簡単な資格ではなく、法規・施工計画・品質管理・安全管理など幅広い専門知識が求められます。この資格を持っているだけで、転職市場での評価は大きく変わります。
まとめ:あなたが「底辺」かどうかは、データが答えを出している
最後に整理します。
「底辺」と言われる背景には、外からのイメージや一部の悪い環境に起因する偏見があります。しかし現実は、国家資格が必要な専門職であり、年収水準は業界平均以上、社会インフラを支える不可欠な存在です。
もし今つらいなら、それは職業の問題ではなく環境の問題である可能性が高い。そして業界は、確実に変わろうとしています。
たかしんから、最後に一言
15年、現場を続けてきた僕が言えることは一つです。
あなたが毎日やっていることは、建物を完成させることです。図面を現実にすることです。職人さんの安全を守ることです。
それは、声高に語られることは少ないかもしれない。SNSで「いいね」がつくような仕事ではないかもしれない。
でも、誰かが必ずやらなければならない、社会にとって本物の仕事です。
底辺かどうかを決めるのは、他人の言葉ではなく、あなた自身の選択と積み重ねです。
どうか自分を底辺と呼ばないでください。
