この作業、進めていいのか――
若手の頃、私は毎日この判断で頭を抱えていました。
止めるべきか、進めるべきか。今言うべきか、様子を見るべきか。
15年経った今、分かったことがあります。
迷わない施工管理は、センスではなく「型」を持っています。
はじめまして、たかしんです。
施工管理として15年、工程管理・安全管理を中心に現場を見てきました。
資格は1級建築施工管理技士です。
この記事では、私が15年の現場経験の中で一貫して使ってきた「判断の共通ルール」を整理します。
目次
なぜ若手施工管理は現場で迷うのか

若手施工管理が迷う理由は、能力不足ではありません。
情報が多すぎる現場
現場には、上司の指示、職人さんの段取り、工程表、安全・品質のルールがすべて同時に存在します。
👉 判断基準がなければ、何を優先していいか分からなくなるのは当然です。
優先順位と判断基準が混同している
「優先順位」と「判断基準」は別物です。
- 優先順位 = 何が一番大事か
- 判断基準 = どう決めるか
例えば「安全が最優先」と分かっていても、
- 今日中に終わらせないと明日が回らない
- 職人さんがすでに段取りを組んでいる
こうした状況で「止める」という判断ができないのは、明確な判断基準がないからです。
この2つが曖昧だと、現場では必ず迷います。
※ 優先順位については
👉 「若手施工管理が最初に覚えるべき現場の優先順位」で詳しく解説しています。
判断できる施工管理が必ず持っている3つの基準

現場で判断に迷ったら、私は必ずこの3つを順番に考えます。
① 安全を削っていないか
最初に見るのは、必ず安全です。
- 危険な姿勢になっていないか
- 養生・手すりは十分か
- 無理な人員配置になっていないか
👉 ここで少しでも引っかかれば、工程に関係なく止めます。
過去に工程優先で無理をした現場で、幸い軽傷で済みましたが、ヒヤリハット報告を経験してから、私は安全を最優先にしています。
安全は「調整」ではなく、絶対条件です。
参考データ: 建設業の死亡災害の約40%は墜落・転落によるものです(厚生労働省 令和5年度)。養生・手すりの確認は命を守る基本です。
出典:厚生労働省「建設業における安全対策」
② やり直しが発生しないか
次に見るのは、品質です。
- 確認不足のまま進めていないか
- 無理な施工をさせていないか
- 後で手直しになる作業ではないか
👉 やり直しが出る判断は、結果的に工程を壊します。
品質は工程の一部だと考えてください。
③ 工程全体を壊していないか
最後に、工程を見ます。
- どこに影響が出るか
- 調整できる余地はあるか
- 本当に今やる必要があるか
👉 工程は、安全と品質を守った上で調整するものです。
判断に迷ったときの現場フロー
迷ったときは、複雑に考えなくていいです。
次の順番で確認してください。
① 安全を削っていないか
↓
② やり直しにならないか
↓
③ 工程への影響はどこまでか
👉 ①②でNGなら、工程は一旦止めるが正解です。
これは弱さではなく、施工管理としての判断力です。
※ 工程が遅れたときの具体的な対応は
👉 「工程が遅れたとき施工管理は何から手を付けるべきか」で解説しています。
よくある間違った判断とその末路

現場でよく見る失敗パターンです。
ケース1:工程優先で養生を省略した結果…
ある現場で、工程が押している中、足場の一部養生を「後でやる」として作業を開始しました。
結果
- 作業員が転倒し軽傷、工程が3日遅延
- 安全パトロールで指摘も受け、信頼低下
一番守りたかった工程が、一番大きく壊れました。
ケース2:経験豊富な職人さんに任せきりにしてしまう
「あの人は大丈夫」「コミュニケーションのタイミングを逃してしまった」
結果
- 図面との相違に気づかず施工
- 手直しで1週間のロス
- 職人さんとの信頼関係にも影響
※ こうした傾向は
👉 「工程管理が苦手な施工管理の共通点」でも詳しく書いています。
判断基準を現場で”型”にする方法
判断基準は、仕組み化しないと続きません。
朝一で確認する3つのこと
- 今日の作業内容
- 人が交差するポイント
- 無理な工程がないか
👉 工程管理チェックリストを使えば、判断がブレなくなります。
安全判断を習慣化する
- 危険ポイントを具体化
- KYを「作業の打ち合わせ」に戻す
👉 安全管理チェックリストを併用すると、現場で止めやすくなります。
若手施工管理からよくある質問(Q&A)
Q1. 現場で「止める」と言ったら、職人さんに嫌がられませんか?
A. 最初は抵抗があるかもしれませんが、理由を明確に伝えることが重要です。「安全のため」「手直し防止のため」と具体的に説明すれば、ベテラン職人ほど理解してくれます。むしろ、曖昧なまま進めて事故が起きた方が信頼を失います。
Q2. 上司と現場の判断が違うときはどうすればいいですか?
A. まずは上司の意図を確認しましょう。工程を優先する理由、背景事情があるかもしれません。その上で、安全や品質面でのリスクを具体的に報告し、「こうすれば両立できます」と代替案を出すのがベストです。
Q3. 「やり直し」と「許容範囲」の境界線はどう判断しますか?
A. 設計図書・仕様書・施工基準が基本です。迷ったら、工事監理者や上司に確認する習慣をつけてください。「多分大丈夫」という判断は、後で大きなトラブルになります。
参考: 国土交通省「公共建築工事標準仕様書」では、各工事の品質基準が明示されています。
国土交通省 公共建築工事標準仕様書
Q4. 判断基準を覚えるまで、どれくらい時間がかかりますか?
A. 最初の3ヶ月は意識的にチェックリストを使い、半年で自然に体が動くようになります。毎朝の確認を習慣化すれば、1年後には迷う場面が大幅に減ります。
Q5. 複数の現場を担当していて、判断が追いつきません
A. まずは朝一の確認を「型」にしてください。工程表を見ながら「今日の危険ポイント3つ」を書き出すだけで、現場の見え方が変わります。すべてを完璧にしようとせず、優先順位をつけることが大切です。
まとめ|判断基準を持てば現場は迷わない
最後にまとめです。
- 判断はセンスではない
- 基準を持てば若手でも判断できる
- 安全 → 品質 → 工程の順番は崩さない
- 工程は結果として守られる
最後に、たかしんルールです。
現場で迷ったときは「止められるかどうか」で判断してください。
止める勇気が、あなたと現場を守ります。
そして、止めた判断が正しかったと思える日が必ず来ます。
この記事があなたの現場での判断を支える一助になれば幸いです。

