1999年に名古屋市西区で発生した主婦殺害事件が、26年の時を経て急展開を見せました。2025年11月1日、容疑者が逮捕され、現場検証が実施されたのです。
被害者の夫である高羽悟さん(69)は、事件発生から9000日以上にわたって現場アパートの家賃を払い続け、証拠を保存してきました。なぜ彼はそこまでして現場を守り続けたのか。そして逮捕された容疑者とはどのような関係だったのか。
現場検証直後に行われたCBC NEWS大石邦彦アンカーマンによる単独取材では、これまで明かされなかった事件の真相と、高羽さんの26年間の苦悩が語られました。「壁の血は全部私が拭き取った」という衝撃的な告白、高校の同級生だった容疑者との意外な接点、そして去年赴任してきた刑事の「絶対に捕まえます」という執念の捜査。
未解決のまま時が流れていた事件が、なぜ今になって解決に至ったのか。遺族の思いと警察の執念が交差した26年間の軌跡を、詳しくお伝えします。
目次
26年間保存された事件現場「壁の血は全部私が拭き取った」の真実
引用元:ライブドアニュース
9000日以上守り続けた現場アパート
1999年に発生した名古屋市西区の主婦殺害事件。被害者の夫である高羽悟さん(69)は、事件発生から26年もの間、現場となったアパートの家賃を払い続け、部屋を保存してきました。2025年11月1日、現場検証が行われた直後、CBC NEWSの大石邦彦アンカーマンが高羽さんに単独取材を行いました。
玄関には今も血痕が残されています。高羽さんは「ここに犯人の血ですね、今思えばきのう逮捕された安福容疑者の血です」と語り、足のサイズ、血液型、DNA型という動かぬ証拠がそこに残されていたことを明かしました。
凄惨な現場を一人で清掃した夫の苦悩
当時32歳だった妻・奈美子さんを失った高羽さん。事件現場の壁に飛び散った血を、すべて自分の手で拭き取ったといいます。
「泣けてきますよ。なんでこんな事しないといけないんだろうと」
兄弟や親戚にも頼めない、殺害現場の掃除。「助けて」とは言い出せず、自分でやるしかなかったと当時を振り返ります。部屋には当時2歳だった長男・航平さんのおもちゃも、そのままの状態で残されていました。
26年という歳月の重みを感じずにはいられません。愛する家族を突然失い、その現場を自らの手で清掃しなければならなかった悲しみ。それでもなお、犯人逮捕のために証拠を保存し続けた高羽さんの強い意志には、言葉にならない思いが込められています。
「絶対僕が来たから捕まえます」去年赴任した刑事の執念
転機が訪れたのは2024年4月。新たに赴任してきた刑事が高羽さんの前で断言しました。
「絶対僕が来たから捕まえます。西署にある情報の中の女に絶対犯人がいると思う。ひとつひとつしらみつぶしにあたります」
その刑事は2か月に1回家を訪れ、調書を読み返しては不明点を確認する電話をかけてくるなど、これまでの担当者とはまったく異なる熱意を見せました。高羽さんは「この人なら解決してくれるかもしれない」と感じたといいます。
警察はこれまで5000人以上を聴取。去年からは捜査対象者を数百人にまで絞り込み、その中に安福容疑者も含まれていました。
現場検証で叶った願いと複雑な心境
11月1日に行われた現場検証。高羽さんは部屋の鍵を開け閉めする役割だけを担当し、中には入れませんでした。
「実際現場検証しているところを正直見たかった」
安福容疑者がこの部屋に入るのは2回目のはず。心境を聞きたい気持ちと、「二度とお前なんか入るなよ」という気持ちが交錯する複雑な思いを語りました。それでも、ずっと願っていた容疑者の現場検証立ち会いが実現したことは、大きな意味を持ちます。
高校の同級生だった安福容疑者「そんなことができるような女性じゃなかった」
軟式テニス部で一緒だった高校時代
高羽さんが見せてくれた高校の卒業アルバム。そこには旧姓・山口として写る安福容疑者の姿がありました。二人は高校時代の同級生で、軟式テニス部でも一緒に活動していたといいます。
高羽さんによると、安福容疑者から好意を寄せられていたそうですが、「僕としては彼女とほとんど会話した記憶がない。彼女がどういう食べ物が好きだとか記憶が今は全くない」と語ります。告白を受けても、ごめんなさいという対応をしていたとのことです。
信じられない事実と未だ報告できない思い
「見れば見るほど、そんなことができるような女性じゃなかったので、未だに信じられない」
高校時代のアルバムに写る容疑者が、26年前に妻を殺害した犯人だったという事実。高羽さんの言葉からは、今もなお信じがたい思いが伝わってきます。
奈美子さんへの報告はこれから
大石アンカーマンから「奈美子さんにどんな報告をしましたか?」と問われた高羽さんは、こう答えました。
「全然分かっていないので、報告できてないです。なぜ彼女が犯人なのか、動機とかもいまだに分からないので、ある程度まとまってから報告する」
犯人は捕まったよと、そういう思いで手は合わせたものの、まだ本当の意味での報告はできていないといいます。
動機が明らかになっていない現段階では、心から安堵することも、妻に報告することもできない。26年間の長い戦いは、容疑者逮捕という大きな節目を迎えましたが、高羽さんにとっての真の区切りは、すべての真実が明らかになってからなのでしょう。
一人の人間が26年間、現場を保存し続け、正義を求め続けた重み。その執念が実を結んだ今、私たちは未解決事件に立ち向かう遺族の思いと、諦めない捜査の大切さを改めて考えさせられます。真相解明に向けて、捜査が進展することを願わずにはいられません。

