「世界一臭い食べ物」と聞いて、まず思い浮かぶのは何でしょうか?納豆やくさやなど、日本にも強烈な匂いの食べ物はたくさんあります。しかし、今回ご紹介する食べ物は、そのどれもが比較にならないほどの「圧倒的な存在感」を放っています。それが、スウェーデン発祥の缶詰、シュールストレミングです。
なぜこれほどまでに強烈な臭いを放つのか、その驚きの理由と、実際に体験する際に知っておくべき知識について解説します。
目次
世界一臭い缶詰「シュールストレミング」の歴史と正体
引用元:シュールストレミング – Wikipedia
シュールストレミングは、単なる珍しい食べ物ではありません。スウェーデンの厳しい自然と歴史が育んだ、ユニークな保存食なのです。その強烈な臭いの裏には、北欧の知恵と工夫が隠されています。
昔は貴重な塩を節約するための知恵だった
シュールストレミングの歴史は中世ヨーロッパにまでさかのぼります。当時は塩が貴重品で、ニシンを塩漬けにして保存することが困難でした。そこで生まれたのが、薄い塩水で発酵させるという方法です。これにより、腐敗は防ぎつつ、ニシンを長期間保存できるようになりました。この知恵が、シュールストレミングの強烈な臭気のルーツとなっているのです。
なぜ缶の中で膨らむの?
シュールストレミングの缶詰がパンパンに膨らんでいるのを見たことがあるでしょうか?これは不良品ではありません。むしろ、中身が生きている証拠です。日本の漬け物のように、缶の中で発酵が継続しているため、ガス(主に二酸化炭素)が発生して缶が膨張します。スウェーデンのスーパーマーケットでは、品質を保つために冷蔵コーナーに陳列されています。
納豆やくさやをはるかに超える臭いの正体


シュールストレミングの臭いは、臭気指数計でくさやの6倍以上、8070Auという驚異的な数値を記録しています。この強烈な臭いの元となるのは、缶の中で活動するハロアナエロビウムという嫌気性細菌です。この細菌がプロピオン酸(刺激臭)、硫化水素(腐った卵のような臭い)、酪酸(腐ったバターのような臭い)などを生成し、あの独特の香りを生み出します。
シュールストレミングを食べたい人が知っておくべきこと
「世界一臭い」と言われるシュールストレミングですが、スウェーデンでは年間約200万人が食べているという統計もあります。その背景には、適切な開け方や食べ方が存在します。安易に挑戦すると後悔することになるかもしれません。
缶を開ける場所は絶対に屋外!
シュールストレミングを開封する際は、必ず屋外で行うことが推奨されています。なぜなら、缶に充満したガスで汁が勢いよく噴き出し、強烈な臭いが広範囲に拡散するからです。スウェーデンでは、屋内での開缶は法的に禁止されているという話もあるほどです。もし、家の中で開けてしまったら、数日間は臭いが消えないだろうな…と想像するだけでゾッとします。
飛行機への持ち込みはNG!その理由は?

気圧の変化によって缶が破裂する危険性があるため、ブリティッシュ・エアウェイズやエールフランスなどの大手航空会社では、シュールストレミングの機内持ち込みを禁止しています。危険物として扱われ、厳重な梱包と特殊な輸送方法が必要となるほど、その取り扱いはデリケートです。
伝統的な食べ方を知る
シュールストレミングは、そのまま食べるよりも、スウェーデンの伝統的な方法で食べるのが一般的です。薄いパン「トゥンブロード」に、ジャガイモ、紫タマネギ、サワークリームなどと一緒に載せて食べます。また、ウォッカや北欧の蒸留酒「アクアビット」で洗うと、臭みが3〜4割軽減されるとも言われています。この食べ方の工夫を知ることで、シュールストレミングをより楽しむことができるでしょう。
まとめ|シュールストレミングの魅力と注意点
今回は、世界一臭い缶詰「シュールストレミング」について、その歴史、臭いの正体、そして適切な取り扱い方法を解説しました。
- 歴史と正体: 貴重な塩を節約するために生まれた発酵食品で、缶の中で発酵が続く**「生きている」**缶詰です。
- 強烈な臭い: 納豆やくさやをはるかに超える強烈な臭いは、嫌気性細菌が生成する特定の物質によるものです。
- 取り扱い注意: ガス圧で缶が破裂する危険性があるため、屋外での開缶が必須。飛行機への持ち込みも禁止されています。
- 伝統的な食べ方: 強烈な臭いを和らげるため、パンやジャガイモ、サワークリームと一緒に食べるのが一般的です。
シュールストレミングは、単なる「罰ゲーム」のような食べ物ではなく、北欧の食文化と歴史が詰まった奥深い食品です。もし挑戦する機会があれば、これらの知識を参考に、安全に楽しんでみてください。