タイトルマッチでの熱い闘いを終え、またリングに立つ日を誰もが待ち望んでいました。
しかし、その願いは突然の知らせによって断ち切られます。
まだ28歳、これからの輝きを誰もが信じていた神足茂利選手。
彼が再びリングに戻る姿を見ることは、もう叶わなくなってしまいました。
この記事では、神足選手の歩みと最後の試合、そして残された私たちが感じる喪失と課題について振り返ります。
目次
神足茂利選手 死去の経緯とこれまでの歩み
引用元:中日スポーツ) – Yahoo!ニュース
誰よりも努力を重ね、夢の舞台に立った神足茂利選手。しかし、その闘いの後に訪れた急変は、もう一度リングで姿を見たいという願いを奪ってしまいました。
東洋太平洋タイトルマッチでの死闘
2025年8月2日、東京・後楽園ホール。神足茂利選手は東洋太平洋スーパーフェザー級王者・波田大和選手に挑みました。
試合は互いに一歩も譲らぬ攻防で、最後まで激しい打ち合いが続きました。結果は三者三様の引き分け。王座獲得には至りませんでしたが、観客はそのファイトを惜しみない拍手で称えました。
あの時、誰もが「次こそベルトを取ってくれる」と信じていたのです。
試合後の突然の異変
試合を終え、自らの足で控室へ戻った直後、体調が急変。医務室で意識を失い、救急搬送されました。
診断は急性硬膜下血腫。緊急開頭手術が行われましたが、意識は戻らず、8月8日午後10時59分に息を引き取りました。
現場での流れを簡単に整理すると、
・控室に戻った後に体調が急変
・ドクターチェック中に意識を失う
・緊急搬送され即日手術
・術後も意識が戻らず死去
という、あまりにも急な展開でした。
もう一度リングに立つ姿を、誰もが信じていた矢先のことです。
アマチュア時代から積み上げた実績
神足選手は名古屋市出身。中学からボクシングを始め、高校時代には全国選抜3位の成績を残しました。日大では関東大学リーグで優勝に貢献し、その後M・Tジムへ。
アマ戦績は50勝(5RSC)23敗。2019年のプロデビュー戦では2回TKO勝ちを収め、通算成績は8勝(5KO)2敗2分け。波田戦は初のタイトル挑戦でした。
その積み上げは、まさにこれから花開こうとしていたところでした。
日本ボクシング界で続く悲劇
昨年2月には穴口一輝選手が同様の症状で亡くなっており、今回もまたリング禍となりました。同日の興行では浦川大将選手も急性硬膜下血腫で意識不明のままです。
事故が続く背景として、
・試合での蓄積されたダメージ
・体重制限による体調変化
・十分な休養が取れないスケジュール
・試合後の観察時間の短さ
などの要因が指摘されています。
こうした問題を乗り越えて、再び戻ってきてほしかったと感じます。
ファンと関係者の喪失感
SNSには「必ず帰ってくると思っていた」「またリングで会えると信じていた」という声が溢れました。
応援してきた人々の胸には、叶わなかった再会への悔しさと悲しみが残っています。
神足茂利選手 死去が突きつける課題と未来
今回の出来事は、安全なリング環境をどう守るのかという大きな課題を突きつけました。それは「もう一度戻ってきてもらうため」に必要なことでもあります。
同門の中谷潤人選手からの祈りと惜別
WBC・IBF統一バンタム級王者の中谷潤人選手は「歯がゆいし、祈ることしかできない」と語りました。
休暇を返上し、スパーリング相手として神足選手を支えてきた中谷選手にとって、その別れは痛烈なものでした。
本当なら、もう一度同じリングで肩を並べてほしかったはずです。
リングの安全性向上が急務
ボクシング界では安全対策が進められていますが、それでも命を守りきれない現状があります。
特に改善が求められる点として、
・試合中のダメージチェックの徹底
・試合後の観察時間の延長
・減量負担を軽減するルール整備
・医療チームの常駐と機材の強化
が挙げられます。
これらの取り組みが進んでいれば、また戻ってきてくれたかもしれません。
若い才能の喪失がもたらす影響
28歳という年齢は、これから脂が乗る時期です。次の試合でタイトルを取る可能性も十分にありました。
その未来を奪われたことは、競技全体にとっても大きな損失です。
社会全体で向き合うべき問題
リング禍はボクシング界だけの課題ではありません。メディカル体制の強化、会場設備の充実、安全意識の浸透はスポーツ界全体の責任です。
安全が確保されれば、再び笑顔で戻ってくる選手が増えるはずです。
忘れられないファイトと人間性
神足選手はリング上で冷静かつ鋭い戦いを見せ、リング外では仲間想いの温かな人柄で知られていました。観客席に笑顔で手を振る姿は、多くの人の記憶に残り続けます。
「いつかまた戻ってくる」と信じていたその背中は、今も目に焼き付いて離れません。
まとめ
神足茂利選手は、勝利だけでなく観客や仲間への思いやり、そして努力の姿勢で多くの人に愛されてきました。
リング上で見せた真っすぐなまなざしと、倒れても立ち上がる強さは、これからも私たちの心に生き続けます。
もう一度、あの笑顔でリングに立つ姿を見たかった。
もう一度、試合後にファンへ感謝を伝える声を聞きたかった。
その願いは叶いませんでしたが、神足選手が残してくれた熱い闘志と人間性は、決して消えることはありません。
これからのボクシング界が、選手たちが安全に夢を追える環境へと進化していくことこそ、神足選手への最大の弔いになるはずです。
そして、私たちはずっと、彼の帰りを願ったあの日の気持ちを忘れません。