記録的な猛暑が続く昨今、熱中症による救急搬送者数は年々増加傾向にあります。熱中症とは、高温多湿な環境下で、発汗による体温調節等がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態をさします。屋外だけでなく室内でも発症する可能性があり、適切な対策が欠かせません。
熱中症予防の基本は水分補給ですが、「野菜ジュースは熱中症対策に有効なの?」「どの飲み物を選べば良いの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、熱中症対策に適した飲み物の特徴や野菜ジュースの効果、注意点について、公的機関の情報を基に詳しく解説します。
目次
熱中症の基礎知識と予防の重要性

熱中症が起こる仕組み
人間の体は通常、汗をかくことで体温を調節しています。しかし、高温多湿の環境では汗による放熱が追いつかず、体内に熱がこもってしまいます。さらに、大量の発汗により体内の水分や塩分(ナトリウム)が失われ、体温調節機能や各臓器の働きに支障をきたします。
現在の熱中症情勢
環境省では暑さ指数(WBGT)という熱中症の危険度を判断する数値を提供しており、この指数が28℃以上になると熱中症のリスクが高まるとされています。また、2025年6月からは職場での熱中症対策が法的に義務化されるなど、社会全体で熱中症対策への取り組みが強化されています。
熱中症対策に最適な飲み物4選と特徴
1. 経口補水液【脱水症状時の最適解】

特徴と効果
- 水分と電解質を効率的に吸収できるよう設計された飲み物
- スポーツドリンクより電解質濃度が高く、糖分は控えめ
- 軽度から中等度の脱水症状に特化
適切な使用場面
- めまいや頭痛などの軽度熱中症症状がある時
- 大量発汗後の緊急的な水分補給
注意点
- 日常的な水分補給には不向き
- 高血圧の方は医師に相談してから使用
- 健康な状態では塩分過多になる可能性
2. スポーツドリンク【運動時におすすめ】
特徴と効果
- 適度なナトリウムと糖分を含有
- 運動時のエネルギー補給と疲労回復効果
- 発汗量の多い作業や運動後に有効
適切な使用場面
- 運動や作業で大量に汗をかいた時
- 屋外での長時間活動時
注意点
- 500mlで約35g(角砂糖約9個分)の糖分を含有
- 日常的な摂取は糖分過多のリスク
- 運動をしない場合は血糖値上昇に注意
3. 麦茶【日常の水分補給に最適】
特徴と効果
- カフェイン不含有で利尿作用の心配がない
- 自然なミネラル補給が可能
- 老若男女問わず安心して飲める
適切な使用場面
- 日常的な水分補給の基本
- カフェインを控えたい妊婦や子ども
注意点
- 塩分含有量が少ないため、大量発汗時は別途塩分補給が必要
- 熱中症リスクが高い場面では、塩を少量加えるか、梅干しと併用
4. 野菜ジュース【ミネラル補給も期待】
特徴と効果
- 天然のナトリウムとカリウムを含有
- ビタミンやミネラルの追加補給が可能
- 食事の一部として栄養価値もあり
適切な使用場面
- 食事時の水分補給として
- 日常的な栄養補助として適量摂取
注意点
- 果汁入りタイプは糖分が高め(約20-25g/500ml)
- 糖尿病の方は血糖値への影響に注意
- 食事のタイミングで摂取することが望ましい
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飲み物選びの注意点と糖分の落とし穴

スポーツドリンクや野菜ジュースの糖分含有量
多くの方が見落としがちなのが、熱中症対策用飲料の糖分含有量です。
主な飲み物の糖分量(500ml当たり)
- 一般的なスポーツドリンク:約35g(角砂糖約9個分)
- 野菜ジュース(果汁入り):約20-25g(角砂糖約5-6個分)
- 経口補水液:約10-15g(角砂糖約3-4個分)
糖分過多が招くリスク
血糖値への影響 糖分の多い飲み物を大量摂取すると、血糖値が急激に上昇します。特に糖尿病の方や運動をしない方は注意が必要です。
かくれ脱水症状 高血糖状態では体が水分を欲するため、さらに喉が渇く悪循環に陥る可能性があります。
適切な摂取方法
- 運動量に応じた選択:激しい運動時以外はスポーツドリンクの常飲を避ける
- 希釈して使用:必要に応じて水で薄めて糖分濃度を調整
- 食事との組み合わせ:野菜ジュースは食事時に摂取して血糖値の急上昇を抑制
手作り経口補水液のレシピ【緊急時対応】
市販の経口補水液がない緊急時に、自宅で簡単に作れるレシピをご紹介します。
基本レシピ(1リットル分)
- 水:1リットル
- 食塩:3g(小さじ1/2強)
- 砂糖:40g(大さじ4強)
- レモン汁:大さじ2(お好みで)
作り方
- すべての材料をよく混ぜ合わせる
- 冷蔵庫で保存し、24時間以内に消費する
※このレシピは緊急時の応急措置用です。症状が改善しない場合は医療機関を受診してください。
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年齢・体調別の水分補給ガイド
高齢者の方
- 喉の渇きを感じにくいため、時間を決めた定期的な水分補給が重要
- 腎機能や心機能に配慮し、一度に大量摂取せず少量ずつ
- かかりつけ医と相談の上、適切な飲み物を選択
妊娠中の方
- カフェイン不含有の麦茶や水が基本
- つわり時期は電解質バランスに注意し、必要に応じて経口補水液を使用
- 産婦人科医に相談して個人に適した方法を確認
お子様
- 大人より体重当たりの水分必要量が多い
- 糖分の多い飲み物は薄めて与える
- 遊びに夢中になって水分補給を忘れがちなので、大人が声かけを
糖尿病の方
- 血糖値への影響を考慮し、糖分の少ない飲み物を選択
- 主治医と相談して個人に適した水分補給方法を決める
- 血糖値測定を併用して適切な管理を
熱中症の早期発見チェックポイント

以下の症状が現れたら、熱中症の初期段階の可能性があります。
軽度の症状
- めまい、立ちくらみ
- 筋肉痛、筋肉の硬直
- 大量の発汗または発汗停止
中等度の症状
- 頭痛、嘔吐、倦怠感
- 体温上昇(37-40℃)
- 集中力や判断力の低下
重度の症状
- 意識障害、けいれん
- 体温40℃以上
- 発汗停止
中等度以上の症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診してください。
よくあるQ&A
Q1: 野菜ジュースは1日どのくらい飲んでも大丈夫ですか?
A1: 一般的には1日200ml程度が目安とされています。糖分やカリウムの含有量を考慮し、食事とのバランスを取りながら摂取しましょう。糖尿病など持病のある方は、主治医にご相談ください。
Q2: 子どもの熱中症対策にも野菜ジュースは有効ですか?
A2: 子どもは大人より糖分の影響を受けやすいため、野菜ジュースを与える場合は水で薄めるか、より糖分の少ない麦茶を基本とすることをおすすめします。大量発汗時は適切に希釈した経口補水液を選択してください。
Q3: 高血圧の人はどの飲み物を選べばよいですか?
A3: 塩分控えめの麦茶や水を基本とし、必要に応じて主治医に相談の上で低ナトリウムタイプの経口補水液を利用してください。スポーツドリンクの常飲は避けることをおすすめします。
Q4: 冷たい飲み物と常温、どちらが熱中症対策に良いですか?
A4: 体温を下げる効果から適度に冷えた飲み物(5-15℃程度)が効果的です。ただし、胃腸への負担を考慮し、極端に冷たすぎる飲み物は避け、少量ずつ摂取してください。
Q5: 運動前・中・後で飲み物を変えるべきですか?
A5: 運動前は体内に水分を蓄える意味で麦茶、運動中は必要に応じて希釈したスポーツドリンク、運動後は失った電解質を補うためスポーツドリンクや経口補水液が効果的です。運動強度や発汗量に応じて調整してください。
まとめ:安全な夏を過ごすための水分補給戦略
熱中症対策において重要なのは、状況に応じた適切な飲み物選びです。野菜ジュースは天然のミネラルを含み熱中症対策に一定の効果がありますが、糖分含有量に注意し、日常的な水分補給の基本は麦茶や水とすることが重要です。
基本方針
- 日常の水分補給:カフェインレスの麦茶や水
- 軽度の脱水時:経口補水液
- 運動・作業時:適量のスポーツドリンク
- 栄養補給も兼ねる場合:食事時の野菜ジュース
体質や健康状態により個人差があるため、持病のある方は必ず医師にご相談ください。また、軽度でも熱中症の症状が現れた場合は、迷わず医療機関を受診することが大切です。
適切な水分補給で、健康で快適な夏をお過ごしください。
参考情報
- 厚生労働省「熱中症関連情報」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/index.html
- 環境省「熱中症予防情報サイト」: https://www.wbgt.env.go.jp/
- 職場における熱中症予防情報: https://neccyusho.mhlw.go.jp/